醜いザエルの子(ザエルアポロ・グランツ)

・・・その昔・・・・。
虚圏の虚夜宮という所に、一体の可愛そうな破面の子がいました。

虚夜宮には、藍染惣右介という王様がいて、王様が作った破面の子がたくさん住んでおりました。
けれども、その可愛そうな破面は、他の破面とは違った外見をしていたのです・・。

髪の色が・・・ピンクだったのでした・・。←注)男性体

その髪の毛がピンクの破面の子はザエルアポロと言い、いつもその髪の色の事を他の破面の子たちにひやかされていたのでした・・。

他にも浅黄色など、変わった髪の破面の子はいたのですが、気の毒なことに、ザエルアポロにはお兄さんがいて、そのお兄さんは見事な金髪をしていたのです。
そして、珍しく癖のない真っすぐに伸びた髪は、いつも黄金色に輝き、破面たちの羨望の的だったのでした。

同じ兄弟でありながら、お兄さんは人が羨む金色の髪・・。
けれど、弟のザエルアポロはピンクの髪・・。

他の破面の子たちはザエルアポロを「出来そこないのピンク野郎」とののしっていたのでありました。

「や〜〜い!や〜〜い!!ザエルアポロのピンク野郎!!」
「男のくせに、髪がピンクなんて女みてえな色しやがって!!」
「ピンクがうつるぞ!!逃げろ逃げろ〜〜!」

「うっうっ。」
今日も苛められて、泣きながら部屋に帰るザエルアポロでした・・。

ザエルアポロは部屋に帰ると必ず日記を開きます。
『5月15日 雨のち曇り

今日は、またディ・ロイから「ピンク」と5回悪口を言われました。
自分がカリメロ頭なのを棚に上げて、僕の事を悪く言うなんて許せないよ!

あと、ナキームから3回!!エトラドは2回だったっけ!!
シャウロンなんて「どうも、子供らしさを感じませんね。あなたのその髪は。」だって!!
余計なお世話だよ、全く!

何だよ。皆いつも兄貴の腰ぎんちゃくのくせに!!

だいたい、兄貴と僕は顔は似てるんだ。だから僕だって顔だけなら負けてないはずさ!!
髪の色が違うだけで何で、僕だけ苛められなきゃなんないのさ。
皆、パツキン、パツキンて、ちやほやして!!

ハッ!洋モノのエロ本じゃあるまいし!
大体、金髪の下まつ毛なんて頭スカスカのヤリチンバカだって決まってんだからね!!

注)子供の発言(笑

見てろよ・・!!いつか絶対お前たちを見返してやる!!
お前たちを逆に僕が笑ってやる〜〜!!!!←怨念』


そして、ザエルアポロは頭の良い子でしたので、ピンクと言われた回数をきちんと記録して、正確な棒グラフで現しているのでした。←この時点で絶対友達は出来ない。


でも、ザエルアポロ・・・たまには涙が出ちゃう・・。

だって男の子なんだもん・・。←何のパクリだ。何の。


そんな時は、泣き寝入りなんてザエルアポロはしませんでした。
なんと王様に直訴します。
「王様。
どうして、僕は兄貴と同じ金髪じゃないのでしょうか。

僕はいつも「醜いピンク野郎」と、『僕よりどう見ても醜い奴ら』(笑)から悪口を言われます。

もっと納得できないのは、あのアーロニーロにそんな事を言う奴が一人もいないということです。←あっ!
僕はあのアーロニーロより醜いとはどうしても思えません。
どうしてあのキモいアーロニーロは一言も「醜い」と言われなくて、<髪がピンクなだけ>が欠点のこの僕が醜いと言われなければならないのでしょうか。

お願いです!!僕も金髪にしてください!!」

玉座のアームに肘をつき、その手に顎を軽く乗せ、目をつぶって聞いていた王様が、目を開けました。

「・・なるほど。いろいろ困っているようだね・・・。

・・さて、どうしたものかな。ギン?」

すると、隣に立っていた大臣の市丸ギンが答えます。

「そうですねえ。
はじめに。アーロニーロには誰も『醜い』言わへんていうことですけど、実際ホンマに醜いんや無いからやと思います。」
「そ・そんな馬鹿な!!」
「ザエルアポロ、アカンなあ。ちゃんと言葉言うんは、形容する言葉を適切に使わんと。

エエ?アーロニーロは醜いんや無い。キモカワや。

それにキミの顔は可愛い顔してると僕は思うで?」

「それならば何故、僕は醜いなんて言われるんですか?!」

「そら、キミの内面のこと言うてるん違うん?」
「な・・・!!僕の内面が醜いと仰るんですか!!」

傷ついたような顔でギンを見上げるザエルアポロ。

「そないな傷ついたような顔しても、演技やろ?それ。」
「!!!!」
「まあ、でもキミのそれがキャラなんやし。
折角なんやからそれで通したら?

皆が皆エエ子になる必要やないんやし。
キミらしく頑張ったらええやん。
反対に、キミから『醜い』言うてやったらええんや。」

「僕から・・・奴らに・・・?」

その時、王様が口を開きます。

「ザエルアポロ。私はお前の髪の色を変えてやるつもりはない。

何故なら、髪の色も含めてお前自身だからだ。
魂魄の性質は髪の色にも影響を与える。つまり、その色はお前自身でもあるのだ。
お前はその髪の色を嫌っているようだが、それはお前の欠点にも・・逆に持ち味にもなると思っている。

もっと自分を磨きなさい。

服装を一つ変えるだけでも印象は異なってくるものだ。
お前が自らに磨きをかければ、その髪の色はお前を彩る強みになるだろう。」

「は・・はい!!頑張ります!!」

そして、何か吹っ切れたか、元気よく去っていくザエルアポロ。

気配が消えた段階で大臣が王様に言いました。
「また上手いこと言うて。
単に、めんどくさかっただけですやろ。」

すると、王様が答えました。
「それもあるが、金髪にしてしまうと、兄弟の見分けがつかなくなるからね。
だから色分けすることには意味があるんだよ。」
「ホンマ、悪いですなあ、王様は。」

「・・・お前に言われるとは思わなかったね。
お前の一言でザエルアポロは、『いい子』になる可能性が消えた。

能力的に周りを力ずくでねじ伏せることは出来ないだろうから、さぞかし小細工をするタイプになるだろうね。」

「そやかてその方が面白いですやんか。」


・・一方。
王様と大臣から素晴らしいアドバイスを貰ったザエルアポロは自分を磨くべく、あれこれ頭を悩ませていました。

この髪の色は、自分の魂魄の性質をあらわしているのだといいます。
ピンクのイメージって何だろう・・・。
ピンクレディー、ピンク映画、ピンクサロン、ピンクコンパニオン・・・。←注)最初以外はすべて18禁。

ザエルアポロは閃きました!!
「そうか!!僕のイメージカラーはエッチ臭さか!!!」←違う!

・・そして、ザエルアポロは道を永遠に踏み外すこととなったのです。(笑)

エッチ臭さを出すために、衣装は体の線をこれでもかと出すくらいピチピチに。
でもこれからの季節、汗が出るので、脇パットは欠かせません(爆笑)。

そして、ビジュアルにもこだわります。
破面は、もともと虚だった証の仮面が、割れて頭部に残っていますよね?

それをオシャレメガネに加工します。
ちゃんと、デッサンを描き、その通りになるよう、紙やすりでコシコシ削って形を出す本格派。
毎日毎日、何故か部屋の隅っこで一生懸命やすりをかけます。その際、無論体育座り。(笑)
毎日毎日コシコシコシコシ・・・・。

そして・・・。

「出来た・・!!!
僕の新たなシンボル、オシャレメガネ仮面が!!

これでもう、醜いピンク野郎とは言わせないよ!!」

もう、ザエルアポロは絶好調。
上機嫌で新たな自分を鏡に映して喜びます。

「やっぱ・・・こう・・立ち居振る舞いも気をつけないとね。
インテリらしく、メガネのフレームに手とかかけてさ。
ちょっと横目で見る感じ?」←イヤ、それは美しさじゃなくて、ただのイヤミ野郎なんだけど。

そして、待ちに待ったお披露目の日となりました。
ザエルアポロは上機嫌で自慢のおしゃれメガネをつけ、ピチピチの衣装を着て出かけます。


「・・・アレ・・誰だ?」
ホラ、早速誰かの目にとまったみたいですよ?
「あのピンクの頭って・・もしかしてザエルアポロか?!!」
「げっ、ウソ!マジで?!」

フフフ・・・。早速僕の美しさにビックリしてるみたいだね・・。

「やあ、君たち。いいお天気だね。」
機嫌良く挨拶するザエルアポロでしたが、仲間の反応はというと・・。

「・・あ、ああ。いい天気だな・・。」
「あ、俺ちょっと用を思い出した。」
「あ、俺も。じゃな、ザエルアポロ!」

そそくさと居なくなる破面たち。そんな破面をザエルアポロは得意げに見送りました。

「クハハハハ!!僕の美しさに逃げ出して行ったよ!
当然だろうね、僕の計算されつくしたこの美しさに適うわけなんてないんだから!!」


そこには苛められていた醜いザエルの子の姿はどこにもありませんでしたとさ。



「・・おい・・見たか?ザエルアポロ。」
「ヤベエって!!目がイっちゃってるよ!!」
「あんなん近寄らねえ方がいいって。何されっか分かんねえぞ。」
「こええ〜〜〜!」


・・・そして、友達もできなかったという事です。


おしまい。

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