夏の妄想(檜佐木修兵)

楽しかったゴールデンウィークも終わり、待ちうけるのは現実の厳しさだ。
人は休日の余韻を楽しむ間もなく、目の前の成すべきことに振り回されるこの季節。


・・修兵は三番隊にいた。←注)持ち場は九番隊

「・・・ゴールデンウィークも終わっちまったな・・。」
「そうですね、先輩。」


「ああ〜〜、これからまたずっと仕事かよ。暗くなっちまうぜ。」
「そうですね、先輩。あ、そこの書類取ってくれます?
あ、その隣です。そう、それ。
どうも。」

まったく気持の入っていない相槌をお義理で律義に返しているのは、書類をせっせと片付ける吉良イヅルである。

「俺はこれから、何を目標にして毎日を過ごせばいいんだろうな・・。」
「そうですね。卍解を会得して隊長になる事じゃないでしょうか。
ちなみに僕もそうです。
あ、次そっちの書類取ってくれませんか?それとこの書類はそっちに置いといてください。
どうもすいません。

「・・じゃなくてだ。
俺はそんな真面目な話をしてるわけじゃねえ。」
「不真面目な話の為に僕の仕事の邪魔をしにいらしてるんですか?先輩。」
「大真面目だとも。

大真面目で、これからの俺達のうるおいをどこに求めるかを話し合いに来たんじゃねえか。」
「サラリと複数形を使わないでください。
僕はそんな話に興味はありませんから。」
「じゃ、お前は潤ってるってのか?」
「そりゃ・・・そんなわけじゃないですけど・・。
でも今はそんなこと言ってる場合じゃないですし。」

「バカか、てめえは。
男ってのは、うるおいがあってこそ、真面目に仕事が出来るってもんなんだ。
バリバリ仕事をする奴は必ず潤いの場を持ってるもんだ。
そんなんでいい仕事が出来ると思ってんのか?!」←熱い主張キタ。

「なくても僕はいい仕事をしてるつもりです。」←こっちも何気に熱い主張(笑)。
「現状に満足してんじゃねえよ。

男だったらもっと上を目指せ!」

「何を言ってるのか、分かりません、先輩。」
そりゃそうだろう。イヅル、君の意見は正しい。

「いいか、俺が潤うための目標を決めてやる!!

夏だ!!夏の為に俺たちは仕事を頑張るんだ!!」

「でも、来月には季節はもう夏ですよ?」
「違うな。」
言下に言い捨てた修兵。

「夏ってのはな・・・海辺に水着の女の子たちがわさわさしてる季節の事を言うんだよ。」
「・・・・・・・。」
どうした、イヅル、しっかりしろ!!(笑)

「・・・まあ・・そう言えなくもないですけど・・。」
「俺がお前だけに耳寄りな情報を教えてやる。」
「なんですか?」
「女性死神協会は夏休みに現世の海辺へに行くことが決定しているらしい。」
「・・・それで?」
「俺たちも行くんだよ。」
「ええ?!!それは・・流石にムリなんじゃ・・。」
「ムリなんかじゃねえ。やるんだよ。
無理でもやる!!それが男だ!!」

「先輩・・カッコいい言葉ですけど、それは別の時に使った方が効果的なんじゃ・・。」←(爆笑)
「バカ野郎、今使わねえで何時使うんだよ。

いいか?想像してみろ。

夏の海辺をだ。
白い砂浜。照りつける日差し。

砂浜には色とりどりの貝の如く、散らばる色とりどりの水着。←イヤ、水着は散らばらんだろ。

・・そして・・・

寄せては返す波の如く、寄せては上げる女の子たちの胸・・・。」

「先輩。波と胸との関連は全くないと思います。」

「細かいことに突っ込むんじゃねえ。

そして・・・さざ波のような胸から特大のビックウェーブの胸まで!

くそ〜〜、乗ってみてえぜ、モンスター級ビックウェーブ!!←?

浜辺の万国博覧会!!


それこそが、あるべき正しい夏だ!!」

「・・・僕はなんか違うと思いますけど・・。」
「そこでだ。←聞いてない。

俺たちがそこに潜入するんだ。」

「絶対見つかりますよ。砕蜂隊長や卯ノ花隊長もいらっしゃいますし。」
「やるなら堂々とやる。」
「どうやってですか?」
「夏の海辺には必要なものがまだあるだろう。」
「なんですか?」
「海の家だ。
そして、海の家にはイケメンの店員が必要不可欠だ。」

「・・つまり、海の家でバイトするんですね?」
「そうなれば、水着のかわいこちゃんたちとも話し放題のナンパし放題だ。

どうだ、潤うだろう!!?」

「・・まあ・・そう言えなくもないですけど・・。」

「となれば、決定だ。
俺が日程を早めに聞き出すから、お前はその日死んでも空けとけよ?

いいな?吉良!
よかったな、これで仕事の張り合いが出来たってもんだ。

じゃ、俺は隊に戻んなきゃいけねえから。
しっかり仕事しろよ?」


颯爽と帰って云った修兵。
呆然と見送るイヅル。

姿が見えなくなって暫くしてからイヅルの口がようやく動いた。

「・・僕・・まだ行くっていってないんですけど・・・。

なんか先輩と二人だと不安だな。阿散井君も来ないかな・・・。」

何故か上手く行く気がしないイヅル。
手の中の書類を見つめて呟いた。


「・・とりあえずは仕事しよう・・。」



・・・こんな時のイヅルの予感は何故か当たる。



イヅルは不安を払しょくするように、また書類を片付けていった。



なんちゃって。

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