熱血Father's Day(黒崎家の父の日)

『・・・黒崎一護、15歳。

世間は父の日だなんだと騒いでるみてえだけど、俺にとっては関係無えし。
つーか、父の日だから、親父になんかするなんてことは、小学校で先生に言われたからやってたけど、中学に入ってからはそんなもん、わざわざやってられっかよ。

大体、俺は父の日なんて良い思い出どころか、イヤな思い出ばっかだぜ。』


ということで、在りし日の父の日の黒崎家・・。
ていうか、黒崎医院・・。←?

内科を受診に来院した患者が、入口の扉に何やら張り紙が貼られていることに気が付く。
「あらまあ・・今日はお休みだったかしらねえ・・。」
水曜午後は休診だが、その日は木曜日。午後も受診があるはずだ。
しかし、医師は黒崎一心唯一人の小さな病院だ。
一心が体調を崩せば、臨時休診があったとしても、おかしくはない。

ともあれ、張り紙の内容を見よう。
そう思って扉に近づいた患者はある事に気がついた。
その張り紙は、休診を告げるものではなかった。


なんと・・一心の息子、一護が父の日に書いた、一心への感謝状だったのである。
ちなみに、汚れないように、ラミネート加工済み(爆笑)
無論、一護が進んで書いている筈がない。
小学校の道徳の授業で書かされた代物である。←文面もやらされ感丸出し(笑)


一瞬入っていいものかどうか、迷う患者。←そりゃ当然だわな。
でも、「只今診療中」の札を見つけて、入っていった。

「あら〜〜、いらっしゃい〜〜。」
受付の何時もの医療事務のオバちゃんが対応する。
でっぷり肥った、キモったまが座ったオバちゃんだ。
ヤモメになった一心の尻を蹴り飛ばして、説教するようなツワモノである。

「びっくりしたわよ〜〜、入口〜〜。」
「ああ〜〜、そうでしょう〜〜?もう〜〜、うちの先生ったら〜〜。」
どうやら馴染みの患者のようだ。親しげに話している。
「あれだけじゃないのよ〜〜。あ、父の日に来たの初めてだっけ?」
何のことだろうかと、オバちゃんの指差した方角を見る患者。

そこには・・壁一面に父の日に息子から貰ったと思われる感謝状(コピーしたらしい)が貼られ、本棚の上には、出来そこないの貯金箱だのなんだのが、ずらりと並べられていた。
「・・・・・・・。」
言葉を失う患者。そこに、事務のオバちゃんが説明を付け加えた。
「父の日仕様なんだってさ。」
「そ・・そうなの・・・。」

今日の先生には診てもらいたくないかも・・。
ちょっと思った患者だった。

その後、父の日仕様の存在を初めて知ることになった息子、一護。
父、一心と初めて本気の取っ組み合いの喧嘩をして、親子の親睦を深めたようである。(笑)


『・・・・なんだかんだで、それから何にもしなくなったっけか・・。
・・・ま、元々ガラじゃねえし・・。』

一護の妹達は小学生で、女の子ということもあり、マメに父の日をやっていた。
もっとも夏梨は遊子に付き合わされているようだが。
夕食の際に、いつもよりもご馳走を作っていた。プレゼントはボールペンのようだ。
当然、一護は何もしない。
娘たちから、プレゼントを渡され、鼻の下をこれでもかと伸ばし切った、一心。
くるりと一護の方を向いて聞いてきた。

「お前は?一護。今日は父さんに感謝の気持ちを表してもいい日なんだぞ!!?
なに、恥ずかしがることはない!!
バーンとこの父の胸に飛び込んで・・ぐお!!」
「ヒゲ全部引っ込むくぞ、このオヤジ!!」

こんな会話もいつもの事だ。
何時もなら、それですんなり引く一心だが、今日は違った。
「それじゃあ、今日はお前に酌をしてもらおうか。」

ビールの缶を一護の方へ押しやり、空のガラスコップを一護の方へ向けた。
まあ・・それくらいなら・・と一護が渋々ビールのプルトップを開ける。
そして、一心のグラスに注ぎ始めた。
一心はそれを満足そうに見ている。

「おう!サンキュ!!」
満たされたビールを一気に飲み干した一心。
ごくごくという喉の音が如何にも旨そうな音だ。
「ぷは〜〜!旨い!!」
「・・なんだよ、俺にはくれねえのかよ。」

面白くなさそうに言う一護に、一心がニヤリと笑いながら答えた。
「まだ未成年だろうが。
二十歳になったら、いくらでも飲ませてやるさ。」
「・・ちぇっ。」
ふてくされたように横を向く。そんな一護に一心がこう言った。
「しかしなあ・・お前だけ父さんに何もくれないというのはさびしすぎる気がするんだが・・。」
「うるせえ!!」
「じゃ、こうしよう。
一護。お前が二十歳になったら、最初に呑むのは父さんとだ。
それが父のプレゼントにしよう。」
「なんだ?そりゃ!!
なんでテメーと呑まなきゃなんねえんだよ!!」
「・・そうか・・・。
では仕方がない・・。
仕舞っていたお前の過去の父のプレゼントを全部毎日医院の方に飾るとするか。」
「バカか!!てめーは!!
止めろ!!恥ずかしすぎるだろうが!!」
「じゃ、キマリだ。」

「て・・めえ・・!!!」
怒りにプルプルする一護を、一心は面白そうに眺めていた。



『・・まあ、そう怒るなよ、一護。
息子と酒を呑みたいなんざ、オヤジ共通の夢なんだからよ。


・・楽しみにしてんだよ、これでも。


・・だから、それまで頑張ろうぜ。


・・お互いにな。



・・生き残ろうぜ。



・・「何があっても」だ。』






なんちゃって

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