握った拳(山田花太郎)
・・・なんで僕はこんななんだろう・・・・。
・・・僕は、男らしい体にずっと憧れていました。
みっともなく細い体。みっともない小さな体。
気がついたときには、僕は同姓の友達からどころか、女の子からもからかわれていました。
真央霊術院の皆にも・・・
「山田!!アンタ男でしょ?!なんで、そんなに細いのよ!!いや〜〜〜!あたしより細いかもしんない。」←(すいません・・・でも正直細いと思います・・。)
「花太郎、お前、絶対生まれる性別間違えてるって!!もう一度やり直したらどうだ?」←(そう出来れば、僕も楽なんですが・・)
「げ〜!寄るなよ!オカマがうつるぜ!」←(一応オカマではないと思うんですけど・・)
「花太郎ちゃ〜〜ん!今日、実技実習出来ますか〜〜?え?生理中?もう〜〜、しょうがないんだから〜〜!」←(正直その理由でいいから、欠席したいです・・。)
・・こんなのしょっちゅうだったな・・。
僕も自分を変えようと色々やってみたんですよ?これでも。
身長伸ばそうとして1日牛乳1リットル飲んでみたり、食べる量を増やすために消化剤飲んでから無理にいっぱい食べようとしたり。
でも、お腹を壊しただけで何にもなりませんでした。
だったら、筋肉つけようと運動を頑張ってみたら、直ぐに貧血を起こして医務室に運び込まれる始末で。
・・・・やっぱり悔しかったですね。
その時に医務の先生から言われたんです。
僕は、いわゆる「男らしい体」には、体質的になれないって。
それに、僕がホントは戦いが好きではないことも見抜かれてました。・・・ハハハ。
僕は喧嘩で勝ったことはありませんでした。
勝とうとも思わなかったし、勝てる実力もありませんでしたしね。
でも人が争うのを見るのは嫌いです。
他の人も。もちろん自分も。
だからなるべく、大事にならないように、長いものに巻かれてなんとかやってきました。
こういうの、ヘタレって言うんですよね?
そう言われても仕方がないと思います。
戦闘能力が全くない僕は、死神になるには治療部隊の四番隊を目指すしかありませんでした。
13ある隊の中でも、四番隊は治療と補給専門だと聞いていたし。
それならば僕でも何とかなりそうだと思いましたから。
でも、四番隊に所属されても、正直僕はお荷物だったと思います。
補給というからには、重い荷物を運ばないといけないんですが、これはさっぱりでしたし。
取り柄と言えば、治療くらいなものでした。
だから七席になれたのには、正直僕もびっくりしたくらいなんです。
ほそぼそと、治療の仕事をしながら、上の人たちの言うことを聞いて、ずっと日々が過ぎていくんだなあと、ぼんやり思っていました。
・・・・そう。一護さんたちに会うまでは。
一護さんにはびっくりしました。
だって、ただの旅禍なのに、死刑囚である朽木さんを本気で救い出そうというんですから。
僕はそんなのありえないと思いました。
でも、迷いのない一護さんの目を見て・・・僕の中の何かが変わったような気がしたんです。
今思い出しても、よくあんなことが出来たなあと驚いているくらいで。
しかも一護さんは何処の隊にも所属していない上に、あの阿散井副隊長を倒してしまったんですよ?
何の死神の修行もしていないと思える人が、副隊長を倒してしまうだなんて・・・。
一護さんを見て、僕は気づいたんです。
「ああ・・・。僕は・・・こんな男の人になりたかったんだなあ。」って。
自分が本当に間違っていると思えば、なんとしても変えようとする強い意志。
それがどんな権力であろうが怯まない精神力。
そして、それをなしえる力。
力があふれる肉体。
まだ、お若いみたいですから、身長も伸びるんでしょうけど、それでも凄いと思いました。
ホント・・・一護さんて凄いですよね。
・・僕は一護さんみたいには、どんなにしたってなれません。
自分の剣で、道を開くなんて事は絶対に。
男として生まれた以上、誰もが強くたくましくなりたいと願うと思います。
そう、一護さんみたいに。
僕もそうです。
でも全ての人が、そうなれるとは限りません。
僕みたいに、どうやってもなれない人もいると思うのです。
正直、一護さんを羨ましいと思います。
でも同時に、どこまでも進んで欲しいと思いました。
目の前には、阿散井副隊長との戦いで傷ついた一護さんがいます。
僕も・・・戦いたい・・・!!!
もちろん、刀を取って戦うなんて僕には出来ません。
足手まといもいいところです。
でも、僕も戦いたい!!
一護さんと一緒に戦いたい!!
・・・僕に出来ることって・・何・?
僕が唯一出来ること。
それは、治療だ!!
僕は刀を取って一護さんと一緒に戦うことは出来ない。
でも、一護さんを治療して、彼にもっと先に進んでもらうことは出来る!!
やろう・・!!
僕に出来ることをやろう!!
それが、どんな些細なことであっても、一護さんのためになるなら!!
一護さん!治します!!
僕が!!絶対に!!
その時僕は気がついた。
「絶対」なんて言葉・・・。自分で使ったの初めてだな・・・。
一護さんに会って、僕は勇気をもらった様な気がします。
僕が出来ることなんてきっと僅かなことです。
でも、その出来ることを・・・自分で探すようになれたと思うんです。
だって・・・戦いたいですから。
・・・・僕だって、
・・・「男」ですからね。
不安になった時、ぐっと拳を握ってみるんです。
小さくて・・・ちっぽけな拳です。
でも・・・これが、「僕」の拳なんです。
誰でもない、僕の。
一護さんみたいには僕は進めません。
でも・・・・一護さんみたいな人たちを、支えることの出来る僕でありたいと思います。
・・・・そう。この拳でね。
なんちゃって。