オレンジ色の嵐(恋次と一護)
「・・・・生意気な野郎だぜ。」
一護を初めて見たときの第一印象がこれだった。
そして今、あいつを表現するとしても、俺はこう言うだろうな。
一護は何から何まで常識はずれな奴だった。
ルキアの力を手に入れて、何処にも属さない死神になった時からだ。
にわか死神の癖に、副隊長の俺と張り合いやがった。
いや・・・朽木隊長がいなかったら俺はやられてたな・・。
しかしそれも、朽木隊長が、一護の鎖結と魄睡を砕いたことで終わったはずだった。
しかしあいつは、またもや死神として俺たちの尺魂界に乗り込んできやがった。
・・・ありえねえ。
未だにどうやって死神になったのか、あんまり理解出来てねえんだ。
しかも以前とは比べ物にならないくらいどんどん強くなりやがった。
そしてまたもや俺は負けた。
俺たちの尺魂界には厳正な掟がたくさんある。
何故っていわれても説明できねえものも多い。
でも、誰もそれをおかしいとは思わなかった。
イヤ・・・おかしいとは思っても、誰もそれに対して行動しようとはしなかった。
それをあいつが変えやがった。
正直言って、尺魂界の掟も制度疲労を起こしていたのは事実だ。
だが、一度作ってしまった掟って言うのは、余程のことがない限り、なくならねえのが実際のところだった。
出来た当初は当然その必要があったからだ。
必要が無くなったからって言って、直ぐに無くすわけにもいかねえだろう。
そんな古臭い掟が山のように積み重なって、しかも守らなければならないものとして、存在し続ける。
そして俺たち自身を、がんじがらめにしていた。
・・・そこを突かれたのが、ルキアの処刑の話だった。
みんな心の中でおかしいとは思いつつ、動けねえでいる・・。
そんなところにオレンジ色の嵐が吹きやがった。
その嵐は、掟だからと言って、ルキアを助けることに二の足を踏んでいた俺の悩みを吹き飛ばしやがった。
それだけじゃねえ。
朽木隊長を超えたいと思いつつ、圧倒的な強さを見て、知らないうちに尻尾を丸めていた俺の負け犬根性まで、綺麗さっぱり吹き飛ばしやがった。
お前に負けて、目を覚ました時。
俺は自分が今までとは違うことに気がついた。
やれる。
俺は強くなれるということに。
・・・なんて貸しを作りやがったんだ、てめえは。
結果お前の卍解修行に参加させてもらったわけだが、卍解に到達したのは俺のほうが先だった。
今だから言うが、本当は少し嬉しかった。
一護が卍解を会得すれば戦うのは恐らく朽木隊長だ。
先に俺のほうが朽木隊長を倒せると思ったからな。
一護はあの段階でも十分過ぎるほどやっていた。
後は俺がやりたかったんだ。
そして少しでも借りを返したかった。
でも俺は隊長に負け、一護は勝った。
それだけじゃねえ。
それまでの朽木隊長の決意を変えさせやがった。
結果、ルキアは助かった。
また借りが増えちまった。
藍染隊長の野望は阻止できなかったという、苦い後味は残ったが、オレンジ色の嵐は正しく、尺魂界を変えたといってもいいだろう。
山本総隊長は、今ある掟の是非を一つ一つ見直すという作業をしているそうだ。
「掟は守らなければならぬ存在。
だからこそ、今一度精査する必要がある。」
とかいって、物凄い量の書類と格闘しているらしい。
山本総隊長も・・・今回は流石に堪えた見てえだな。
問題があると分かりつつも、それに目をつぶってきた俺たち。
オレンジ色の嵐は、痛烈に吹き荒れやがった。
「おまえら、それでいいのかよ。」
てな。
とりあえず、俺はおめえに沢山借りがある。
ぜってえに、利子をしっかりつけて返してやる。
おめえがいらねえって言ったとしても、そんなのは無視だ。
覚悟しとけよ?
俺はもっと強くなってやる。
朽木隊長にも勝ちたいが、今はお前に一番勝ちてえ。
なんでかな。お前とはいつまでも張り合える奴でいたいんだ。
それで、一緒に戦える、そんな奴でいたいんだ。
お前はこれからも色々な事と戦うことになるだろう。
でもお前がもし立てなくなった時、俺が必ず肩を貸してやる。
お前がもし自分を見失うようなことがあるならば、俺がぶん殴って正気に戻してやる。
こんだけ借りがあるんだ。
それくらいのことはさせてもらうぜ?
な?一護。
なんちゃって。