男の性分(斑目一角)

ちっ・・・恋次の奴・・緊張しやがって・・。

副隊長の任官の話を聞く、恋次の背中は緊張でガチガチだ。
ガタイがでけえから余計笑えるぜ。

・・・ま、無理もねえか。
今まで必死でやってきたんだからよ。

十一番隊にてめえが来て、一から面倒を見てやったのはこの俺だ。
ま、普段はそんな面倒くせえ事死んでもやらねえが、てめえが面白い目標ぶちかましてたんで、俺が引き受けた。

「俺は・・朽木白哉を超えたいんです。」
たまたま暇つぶしにてめえの剣の稽古をつけてやった時の事だ。
強くなりてえ、強くなりてえって連呼するもんだから、その理由を聞いてやった。
・・・そしたらこう答えやがった。

流石の俺も聞いた瞬間、固まったぜ。
朽木白哉を超えるときやがった。
あの朽木白哉だ。
四大貴族の朽木家の当主で六番隊の隊長。
しかも朽木家の歴史上最強とか言われてる、あの朽木白哉をだ。

はっ!!・・・面白れえじゃねえか。
気に入ったぜ。
男はそれくらいデケエ目標がねえと、面白くねえ。

それで俺がてめえの剣を鍛えてやった。
ハッキリ言って俺のしごきは半端じゃねえ。
血反吐吐くのはざらだしな。
だがてめえは、歯を食いしばってついてきた。
弱音一つもらさねえ。

そんな姿を見てりゃ、俺もかわいく思えて来るもんだ。
てめえも俺のことを誰よりも信用しているようだった。
なんか悩みがあれば、必ず俺に相談してきた。

「そういやてめえ・・なんで朽木白哉を超えてえんだ?」
呑み会の時だったか、俺がふとした疑問を投げかけた。
そうすると恋次の奴、途端に素面に戻っちまった。
「朽木隊長から・・取り戻したい奴がいるんです。」
「朽木隊長から?誰を。」

聞けば、ルキアちゃんていう女の子と戌吊の時から家族同然で過ごしていたにもかかわらず、朽木家の養子の話があった時、恋次のほうから手を離してしまったらしい。
その時はよかれと思っていたが、立場が違うということで、今は話をすることすらままならなくなっちまった。

恋次はそれを後悔して、以前の関係を取り戻したい。
そのためには朽木白哉に勝って堂々とルキアを取り戻したい、てな事だった。

それを下を向き、ぐっと手を握り締めながら語る恋次を見て、『・・ああ。こいつ本気だな。』と俺は確信した。

「仕方ねえなあ。
・・・じゃ、俺もつきあってやるよ。」
「有難うございます。一角さん。」

可愛いじゃねえか。女の為に強くなりてえなんてよ。

それから40年間。
てめえは必死で踏ん張ってきた。


・・・・副隊長か。
その次はいよいよ隊長だな。


「そろそろ良いんじゃねえか?ルキアちゃんてのに話してやっても。
相手が幾ら貴族に入ってようが、副隊長なら対等以上だろ?
40年も踏ん張ったんだ。そろそろ元の関係に戻っていい頃だぜ?」

話もまともに出来ねえのを40年。
よくやってきたよ、てめえは。


それをなんだ?
一ヵ月後、ルキアちゃんが帰ってきた時に、いきなり『副隊長だ』って言ってビビらせるだ?

・・・つまんねえ意地張りやがって。
本当は直ぐにでも言いてえんだろ?ルキアちゃんに。

男ってえのは、どうもつまんねえ意地を張っちまう。
男の半分は妙な意地で出来てると思っていい。
ついでに言えば、十一番隊に来る奴は8割がつまんねえ意地で出来ている。

・・・俺もそうだ。
これ以上上に上がらないように、苦手な配慮ってやつを駆使している。
あのチビが副隊長でいる限り俺が上に行くには隊を替わるしかねえ。
俺は死ぬまで更木隊長の下でいるって決めている。
だからこれ以上上に行かないようにいろんな制約をかけている。
まったくガラじゃねえが、これも俺の意地だ。

まあいいじゃねえか。
つまんねえ意地を張ってこそ男ってもんだ。
意地も張れねえ男なんざ生きてる意味がねえってもんだ。


恋次。意地張れよ?
ガンガン張って強くなれ。

副隊長になりゃ、朽木白哉を間近で見ることになるだろう。
ハッキリ言って、てめえとは比較になんねえくれえ向こうが上だろうよ。


てめえも苦労するな〜。


所詮、男なんてものは女の為に苦労するようになってるもんさ。

ま・・・頑張りな。

隊を移れば、てめえは俺の手からは離れる。
だがなんかあったら、俺のところに来いよ。

・・一応は先輩だからな。てめえの。
酒の相手ぐらいはしてやるさ。


どんなにヘタレた時でも意地は捨てるんじゃねえぜ?


それが男の性分だからよ。



それから・・・・


副隊長任官、おめでとさん。









なんちゃって。

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