プライド(ウルキオラ)

・・・大事なものだと・・?
・・下らんな。

我々十刃にとって、価値判断は2つだ。
藍染様にとって有益なものであるか・・・もしくはそれ以外のゴミなのか。

そして、その判断もすべては藍染様に委ねられている。
ゴミと見られていたものでも、藍染様のご意思によりゴミでなくなることもある。

すべては藍染様のご意思ひとつだ。
俺はそのご意思を忠実に履行する道具でしかない。
藍染様のご意思を正確に理解し、それに最も効率的に沿える方法を考え、実行する。
それが俺の役目だ。

最近、ゴミから昇格してきたものがある。
女だ。管理は俺に任された。
事象の拒絶という、珍しい能力を持っていた。
藍染さまは、それを高く評価されている。

俺に藍染様から命じられていることは二つだ。
死なせないこと。そして、我々に自らの意思で協力するよう、『説得』することだ。

藍染様があの女に対し特別な評価を下していることは、他の十刃たちにも影響は大きい。
何時逸ったバカが、藍染様の命に背き、あの女に手を出すとも限らん。
お陰で俺は、あの女のお守というわけだ。

「ウルキオラ、お前に彼女の身柄を任せたい。・・・引き受けてくれるね?」
「承知しました。」
「・・ああ、それから彼女はこちらに来て間もない。おそらく情緒も不安定な事が多いだろう。なるべく『配慮』してやってほしい。」

『配慮』・・・だと?
あの女がここに来た段階で、こちらに協力するしかないことは分かりきった事だ。
あの女にはそれしか道は残されていない。
今さら何を配慮しろというんだ?

「・・・不服そうだね。だが、お前は思考の傾向を読み解き、先回りする能力は高いはずだ。
人には複雑な感情というものが存在する。
そして、その感情が思わぬ行動や能力を生み出す事も判っているだろう?」
「はい。」

当然だ。どうしてその方向になるのかは解らんが、人というものは余計な回り道をしたがるものだ。それは判っている。
だからこそ、こちらも有効な策が打てる。

「そして、どんな者であろうとも、感情を無くすることは出来ないものだ。
それはたとえ・・お前でもだ。

・・・だからこそ、人の感情というものは面白いものだよ。
そして、同時に配慮することも必要だ。では、ウルキオラ・・・彼女を頼むよ?」
「判りました。」


・・・俺に感情だと?ありえん。

ゴミが一人ノイトラにやられたようだ。
あの女は「生きている」と呪文のように繰り返していた。
ゴミがここに乗り込んできた段階でこうなることは、あの女にも判りきっているはずだ。

何をそんなに思いつめる?あの女の肉体は食事をすることを求めているはずだ。
その肉体的要求をを拒否するほど、意外な現実ではないはずだ。

そして、俺はこの女を死なせないことを命として受けている。
思いつめた女の横顔は全てを拒絶している。

この女はあのゴミどもを助けるためにここに来た。
そして、あのゴミどもはこの女の意思に反して、ここに乗り込みそしてここで死ぬことになる。
・・・意思に反した現状だろうが、何故そう思い悩むことがある?

その様子に何やら不快なものが生まれてくる。
俺は思わず素直な俺の意見を言っていた。
「莫迦な連中だと笑えば済む事だ。
何故、それが出来ない?

俺なら自分の力量も量れずにこの虚圏に乗り込んだ、奴等の愚昧に怒るがな。」


・・・あの女が手を上げるとは思わなかった。

・・・それ以上に、この俺があの女に手を上げさせるような事を言うとは思わなかった。

だから、女の手を避けなかった。
手を上げた女の顔は全ての糸が切れそうな顔をしていた。




・・・俺が追い詰めてどうする。
藍染様からも、配慮するように命を受けていたはずだ。



・・どうも・・・・あの女を見ていると調子が狂う。



藍染様のご意思を正確に理解し、それに最も効率的に沿える方法を考え、実行する。
それが俺の役目のはずだ。


俺は藍染様のご意思を忠実に履行する道具でしかない。
そして今現在最も有用な道具であるはずだ。

命を受ける内容と、回数がそれを物語っている。


その俺が命を全うできないような事をしてどうする。
道具に感情など不要だ。
道具は、その道具として最も有用である事にプライドを持てばいい。



『そして、どんな者であろうとも、感情を無くすることは出来ないものだ。
それはたとえ・・お前でも。』



・・プライドだと・・?

・・これも・・・・感情の産物かもしれんな。






・・・俺も下らん事を考えたものだ。
とりあえずは、あの女がこれ以上余計な手間をかけさせないで欲しいものだな。





なんちゃって。

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