プライド(更木剣八)

あ?てめえにとって「大事な物」が何だだ?


そんなくだらねえ事・・・いちいち考えてんじゃねえ。


そんなもん、「殺し合い」に決まってんだろうが。


・・くそ・・・戦いてえ・・・。戦いてえな・・。



今から考えれば、「更木」は結構いい所だった。
毎日が殺し合いだ。水を得るにも殺し合いだったし、寝る所を確保するのも殺し合いだった。
1対1だと、直ぐに俺と殺り合えるような奴はいなくなっちまった。
その後で湧いて出た、徒党を組んで来る奴らもいなくなっちまいやがった。

・・ま、全部俺が殺しちまったからなんだが。

殺り合う相手がいなくなったんで、次から次へと流魂街と旅するようになった。
殺り合える相手がいねえかと思ってな。

だが、ダメだ。なんせ、俺が最初いた「更木」が一番『治安』が悪かったからな。
殺り合えるような奴は、旅すりゃするほどいなくなった。

・・ちっ、退屈しのぎも出来ねえのかよ。

そんな中だった。死神の話を聞いたのは。
虚って奴と殺し合うのが仕事だって言うじゃねえか。

・・・・そんな面白れえもんがあるたあ知らなかったぜ。

それで死神になろうと思ったんだが、よく分からねえが、学校に通わねえといけねえらしい。
そんで、その学校とやらに行ってみたら、お前みたいな奴は入れられねえだとよ。
話にもならねえ。


・・・だから、手っ取り早くやってやった。
「お前ん所の一番強え奴とやらせろ。
俺が勝ったら、そいつと交代だ。」


出てきたのが十一番隊の隊長とかいう奴だった。
なかなか楽しかったぜ?
おかげで死神にもなれた訳だ。


だが・・・なったはいいものの、俺のヒマつぶしにはなってねえ。
殺り合うのが楽しいような虚に会えることなんざ、稀だ。

俺は限られた戦いをどう愉しくやれるかばかりを考える毎日だ。


・・つまんねえな・・・。つまんねえ。

『そんなに戦いが好きかよ!!

あんた・・・どうかしてるぜ!!!』



・・・どうかしてるだと・・?
どうかしてんのは、そう言う奴らのほうだろうが。

男が男と会ったら・・・どっちが強いか考えねえのか?
目の前のヤツと戦ったら、自分が勝つかどうか考えねえのか?
自分に自信があるヤツなら尚更だ。

どっちが強えかやり合いたくならねえのかよ。
そして俺はそれに正直に生きてるだけだ。

当然、一旦やりあうなら命を懸けるってえのがスジだろ?
命を懸けなきゃ本当の戦いなんて言えねえよ。
死にそうに追い詰められたヤツがビックリするような反撃を出してくるのは、命がかかってるからこそだ。
本当の強さは命が懸かってねえと出やしねえよ。

命が懸かってる以上、死ぬかも知れねえし、勝って生き残るかも知れねえ。
だが、所詮はそんなもんは戦いを楽しむ代償でしかねえ。


無論、強けりゃ強いほど生き残る。
そして、次の戦いが楽しめるってワケだ。

俺は強くなりてえ。
もっと強くだ。

これから楽しめそうな奴らが山ほど出て来るっていうじゃねえか。
折角また楽しめそうなんだ。
色々なヤツと殺り合いてえ。

そのためには、こっちももっと強くなってなきゃなんねえだろ?



目の前のヤツと戦いたくなるのは男の本能ってやつだ。
俺はそれに正直なだけだ。正直になれねえほうが、俺に言わせるとどうかしてるぜ。


何処まで正直に生きられんのか・・そして何処まで強くなれんのか・・・。



それを追い求めるのが・・・ま、俺のプライドってヤツなのかもな。




俺は誰かを幸せにするなんてことは出来ねえ。

俺は戦いになれば、必ず目の前のヤツしか見えなくなる。
殺し合うことしか考えられねえ。


だから、お前に傍に居ろなんてこたあ言わねえ。
そんでも傍に居るって言うなら・・勝手にしろ。

その代わりに俺が戦ってねえ時は、お前の行きてえ所に行ってやる。


・・で?どっちに行きてえんだ?

あっちか?分かった。


間違ってようが何だろうが関係ねえよ。


お前がそっちに行きてえんだろ?


・・・・なら、それでいいじゃねえか。









なんちゃって。

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