ラブハンター(雛森と惣さま)

雛森は惣さまの事が大好きだ。


なんせ、惣さまは大人の男で、雛森に優しい。
いつも褒めてくれるし、甘やかしてくれるし、何より大事にしてくれる。

怒鳴られて注意されるだなんてことは、雛森の辞書にはない。

そして、何より惣さまは自分に安全だ。
間違ってもハアハア(笑)しながら、突然自分に襲い掛かってくることなどないだろう。

自分を庇護してくれながらも、絶対安全な存在。


まさしく、惣さまは雛森の理想の男性だった。

そんな惣さまに副官として雛森は仕えているわけだから、文句があるはずはない。
今更他の隊長の下にはつけないくらい、雛森は満足していた。


・・・でもちょっぴり不満がある。


自分はこんなに惣さまの事が大好きなのに、惣さまの方は自分ほどではないらしいということだ。

優しくしてくれるし、嫌われてるとは思わないが、やっぱり惣さまにも同じぐらい自分のことを好きになってほしい。

これってやっぱり我侭なのかしら。


雛森は自分が可愛いという自負がちょっぴりある。
自慢ではないが、男の子からはもてるほうだ。
同じぐらいの年の異性から好意を寄せられることはしばしばだ。

でも気づかないフリをしている。
恋に鈍感な女の子。
ここがもてる女の子のテクなのだ。


そんな自分が、相手が自分を思うより、誰かを好きというのはちょっぴり悔しい。


そこで、雛森は色々な罠を仕掛けていた。

ちょっとした事で目の前でつまづいてみたり・・。
(当然惣さまが、手を伸ばして支えてくれることを計算済みだ。
そのためにそそっかしい所があるところも演出している。)

抱き込まれるように、その際胸元に飛び込むことを忘れなかったり・・。
(作戦成功率、100パーセント)

ついでに怖がりも演出しているので、妙な物音がすれば、「キャッ!」と言って袖口にしがみつく事も忘れない。
(袖口と言うところがポイントだ)


あまりに進展がないので、ついでに胸も押し付けてみたりする。

貧乳好きの、ムッツリ貴族ならここで霊圧で笑うか、無表情ながらも口角が2ミリほど上がるところだろうが、残念ながら惣さまの口角はいつも上がっているので始末が悪い。(笑)


なかなか成果が得られないながらも、雛森は奇妙な安心感を得てもいた。
これほど、アプローチしても進展がないだなんて・・。
なんて、自分に安全な男性なのかしら・・・。

そして雛森はまた惣さまを一層好きになるのであった。(悪循環ともいう。)

そんな折だ。
雛森が外からの帰りに雨に降られた。
急に降ってきた挙句に、土砂降り。

五番隊に戻るまでにはびしょびしょになっていた。
惣さまはその姿を見るや、
「大変だったね。そのままでは風邪を引く。誰かに着替えを借りてくるから、着替えなさい。
そうだな、それまではこれでも羽織っていればいい。
濡れた死覇装のままよりはましだろうから。」
自分の羽織を脱ぐや、雛森に手渡し執務室から出て行った。

残された雛森はというと・・・。
憧れの惣さまの羽織を手渡されて、大喜びをしていた。
まだ、惣さまの体温が残る羽織・・・。
惣さまの匂いがする羽織・・・。

・・・幸せ・・・。

くんかくんか、やってるところに当の惣さまがいきなり帰ってきた。
「きゃっ!!」驚く雛森。
自分の羽織に顔を突っ込んでいた雛森を見て流石に少し驚いた顔になる。
次の瞬間にはまたいつもの優しい笑みをして、替えの死覇装を戸口において去っていった。
「借りてきたから、早く着替えなさい。
・・風邪を引いてしまうよ?」


ばつの悪いところを見られて流石に恥ずかしく思った雛森だが、確かにこのままでは風邪を引く。
今も背筋が寒い。
ありがたく、着替えを始めるのであった。

その間、惣さまは廊下にでてまだ降りしきる雨を見ていた。
その時だ。暗がりから声がした。

「・・・あないに、据え膳並べられても、手出しませんのん?
『据え膳食わねば男の恥』言いますやん。」
「ギンか・・・。見ていたのかい?」
「なんや、面白ろそうや思うたもんで。
それにしても、えらいおモテになられますなあ、ボク羨ましいわ。」

「彼女は無垢だからこそ、価値があるんだよ。
僕自身が彼女の価値を下げる様な行為は出来ないからね。
それに・・一応彼女の上官でもある。」
「優しい振りしていけずやなあ。そこがまた好かれる所なんやろうけど。」
「そうかな。・・・君なら食べてしまうのかい?」
「ボクですか?
ボクもアカンやろうなあ。」
「ほう。それはどうして?」

「ボクの『斬魄刀』は好みがうるさいんですわ。
おっぱいの小さい子には始解もしてくれませんのや。」

「それにしては、あちこち苛めて回っているようだが?」
「『そっち』の斬魄刀は好き嫌い無いエエ子なんやけどなあ。」

「・・仕方の無い子だ・・・。」


一方・・・。
雛森は・・・。

これが元で熱を出して、1日休みをもらった。
心配した幼馴染が様子を見に来ていた。

「ああ〜〜、どうしよう〜〜〜。
日番谷君・・・わたし、絶対藍染隊長に嫌われちゃったよ〜〜〜。」
「そんなことあるわけねえだろうが!」
「あんな恥ずかしいところ見られちゃって・・。」
「いいから寝てろ!お前熱あるんだろうが!」

・・・・今日は、幼馴染に甘えているようだ。



・・・五番隊のラブハンター。
それが隊長を指すのか・・それとも副官を指すのか・・・。

それは誰にも分からない。(笑)。






なんちゃって。

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