老闘神と天才の科学者(山本と浦原)

・・・・・老いし者は若き者の、無謀なる行動に眉をひそめ、


・・・・・若き者は老いし者の、保守的思考に嫌気を感じる。



2000年以上もの長きに渡り、一番隊隊長及び総隊長の座に着く、「生きた死神の歴史」。

それが、山本元柳斎重國である。
度重なる尸魂界の危機を乗り越え、現在に至っている山本には、尸魂界の守護神たる自負がある。

今現在、尸魂界に存在する死神はすべからく彼の後輩であり、殆どは教え子、若しくは彼が作った学院の卒業生だ。

彼以外の者は、皆ヒヨっ子であり、例えそれが同じ隊長とはいえ、所詮は若造に過ぎないのである。

ヒヨっ子ゆえに、年長者たる山本に噛み付こうとする者は多い。しかし圧倒的な力を持って、その頭に特大の拳骨を落としてやれば、大体の者は沈黙する。


だが、そうは行かない者もいる。

その一人が、先の十二番隊長、浦原喜助である。
浦原は天才だった。
その独創的で自由な発想は、数多くの発明と言う形で実を結び、死神の円滑な業務を手助けするものも多かった。

だが、その自由な発想は、同時に山本が守る尸魂界の秩序を乱しかねないとも思っていた。

画期的な発明は、尸魂界に恩恵と供に滅びをもたらす事もありうると思っていた。

それゆえ、山本は浦原が作った発明品を正式に護廷十三隊に採用する事を極限まで手控えた。

便利な発明品によって、おのれの鍛錬を忘れる死神が出てくるのを恐れたためである。
道具はあくまで死神の付属品に過ぎぬ。死神が道具に使われるような事があってはならないと考えていた。


一方喜助は、そんな山本の考えに、一定の理解を示しながらも、全く納得しては居なかった。
道具は、普段の生活や業務をより効率よく行えるようにするために生まれて来る。
喜助が作るものは、そうでない物もあるが、効率化が図れると分かっていて、採用しないと言う理由には全く納得できなかった。

表立って二人が対立した事はないが、すげなく採用を断る山本に、その理由を必ず尋ねる浦原との間に、静かな火花が散っていた事は間違いないだろう。


だが、どんなに隠しても便利なものとは行き渡るのは早い。
正式採用しなくても、口コミで広がった喜助の発明品が、別の複数の隊長から、正式採用するよう依頼されることもあった。

山本は移ろい行く死神の気構えに腹の奥では臍を噛む。

「・・浦原は確かに有用な男じゃ。
しかし、このまま野放しにしておくわけにもいくまい。

首に縄をつけておくか・・それとも・・・」


そんな中、喜助が禁止されている、特殊能力を持った義骸を作り、問題となった。

喜助が行った行動は重罪だ。
山本は、実に厳しい処分を下そうとした。

喜助の行動は、尸魂界に対する謀反そのものであると、評価したのである。
尸魂界に対する謀反の罪とは、死罪である。


そのあまりにも厳しい判断に、他の隊長からも異論の声が上がり、中央四十六室からも、「まだ使える男ゆえ、殺してはならぬ。」との命があった。

しかし、尸魂界にこのまま喜助をおいておく事は危険だ。

それゆえ、喜助は追放の身となったのである。

現世へ行ったとしても、おそらく研究は続くのであろうが、科学技術局でいたようには、素材も資金も自由に使う事はできない。
そのうち、危険も減るであろうとの考えだった。


喜助が追われるように現世へ渡り、気を落ち着かせる山本、。

だが・・喜助が危険であることには代わりがなかったようだ。


尸魂界が藍染にのっとられていたとはいえ、一旦下った命令を覆そうなどと身の程をわきまえぬ旅禍などに、手を貸したのだから。

井上と言う旅禍の小娘が虚圏に連れ去られた件については、尸魂界の方の手は引かせたが、浦原は何をするか、分かったものではない。

あまりに無謀なことだ。
「勝ち目が少ないと分かった以上は、一旦引いて守りを固めるのが、兵法の常道。

反対に攻めていくなぞ、無謀も甚だしいわい。」


だが、・・浦原ならやりかねぬ、と思っていた。
浦原は現世から他の世界へ渡航する事を禁じられている。
それゆえ、それはないと思われる。
しかし、あの黒崎一護なる旅禍を虚圏に飛ばせる事はしかねない。


「愚か者の考える事は、所詮儂には分からぬわい。

・・しかし・・・この際、空座町には犠牲になってもらう。
その代わりに尸魂界だけは死守せねばならぬ。」


元はと言えば、浦原が開発したものが理由となって、今の危機を迎えている。


「・・・やはり無理をしてでも殺しておくべきだったかのう・・。」

守りをいっそう固める山本の姿がそこにはあった。



なんちゃって。

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