桜の下の誕生日(吉良イヅル)

護廷十三隊の副隊長が集まる花見がある。

何故かその花見は、その年の桜の開花が遅かろうが早かろうが、雨だろうが晴れであろうが、ある決まった日に決行される。


その日とは・・・

3月27日だ。

もちろん、全員が集まれるはずもなく、誰かしらは欠席する。

雨の日の場合は屋内になるのだが、桜の木が見えるような場所が選ばれた。
もともとの発案者は雛森だ。
桜の季節とイヅルの誕生日が重なることが多いため、どうせならば誕生日と花見を一緒にやろうと言いはじめた。

女性副隊長同士の横の連携は強い。
あっという間に決定だ。
男性の横のつながりはというと・・・
イヅルと同期の恋次、及び先輩の修兵は参加決定。
恋次が参加するので、元十一番隊の射場も参加。
何気に仲間はずれがキライな大前田もいつの間にか常連だ。

今年の花見はなんと男性の副隊長が全て集まる快挙となった。
例年、女性の副隊長達は皆勤賞なのだが、今年は一人欠けている。

『吉良くん、お誕生日おめでとう!今年は桜あんまり咲いてないけれど、皆さん楽しくお花見しましょうね!』
何時も音頭を取るのは雛森だった。

今年は欠席のため、代わりにやちるが音頭をとる。

「きらりん(イヅル)のことお誕生日おめでとう〜〜!!今年も宜しくね?たまにはやちると遊んでね〜〜。じゃ、みんな〜〜かんぱ〜〜い!!」

今年の桜は開花が早く、5分咲きをこえたところであろうか。
天気にも恵まれ、いいお花見びよりとなった。


イヅルの誕生会といっても、只の飲み会だ。
誕生日会とかこつけて花見をしているに過ぎない。

今まではそうだった。

このところ忙殺される日々を送っているイヅルは桜の花をまともに見たのは今日が初めてのようだ。
感慨深げに頭上の桜を眺めている。

「吉良〜〜♪」
呼ばれて後ろを振り向けば、そこには巨大な乳があった。
「う、うわ〜〜〜!!」
驚いて飛びのくイヅル。当然乱菊だ。
「何よ、その反応。アンタ、ちゃんと呑んでる?」
「いえ・・僕はこの後仕事が残ってますから・・。」
「ああ?自分の誕生日に仕事〜〜?」
「はい。少しでも多く片付けないと・・他の隊にも迷惑かけてますし・・。」
「そう〜〜〜。相変わらずマジメなのねえ〜〜。」
といいつつ、銚子に直接口をつけて酒を呑む乱菊が横目でイヅルを見やり・・そしてニヤリと笑った。

「・・させないわよ?」
「ええ?!!」
「誕生日くらい休みなさい!!いいわね・・・呑んでもらうわよ・・・今日はアンタが脱ぐまでね!!」

・・流石は乱菊。吐くまで呑ませるではなく脱ぐまで呑ませるらしい・・。

「カ・・カンベンしてください!!」
「いいえ!許さないわ!!言うこと聞かないとアタシと戦ってたアンタの様子を皆に言いふらすわよ〜〜!!」
「そ・・そんな殺生な!!」
「ええ〜〜?きらりん、そんなにすっごい負け方したの〜〜?」

「なんだ吉良、乱菊さんにやられてんのか?」
「阿散井君、君からも何とか言ってくれ!」
「乱菊さん〜〜。そんなに男の裸が見たきゃ俺が脱ぎましょうか?一応こいつ、今日誕生日ですから。」

流石は、ガタイに自信アリ!!言うことが違う。

「しゃあないのう。わしもいっちょ付き合って脱いだるわ。」
なぜかここで元十一番隊の結束を思い出した射場。

「恋次のなんて見飽きたわ。なんか十一番隊に所属した連中って恥じらいがないからつまんない。」

十一番隊の花見はバリバリの体育会系だ。
男の裸なんぞ、珍しくもなんともない。

「あ・・でも・・今年は桜がいっぱい咲いてよかったですね。」
精一杯の勇気を振り絞り話題をそらそうとする勇音。

「じゃ、俺が・・・。」
ここでまた話を戻そうとする、実は寂びしんぼうの大前田に、七緒とネムの投げた酒瓶が直撃する。打ち合わせでもしたかのようにタイミングはバッチリだ。

本来主役であるはずのイヅル。
周りはそんなことそっちのけで、騒いでいる。
やれやれ、と思っていると、一番隊副隊長の雀部と目があった。
「とんだ誕生日だな。吉良。」
「・・いいえ。」
「だが、みなこの日を楽しみにしておる。」
「・・・集まる口実にはなりますからね。」
「それもあろう。しかし、お前が好かれておるからこそ、こうやって皆集まってくるのだ。副隊長が集まる誕生日なぞ、お前以外に誰がいる。」
「・・はい。」
「吉良よ。お前は今三番隊を背負う身、苦労もあろう。
しかし、いかに悩みが尽きぬとも、お前には仲間がいることを忘れるなよ。

・・見よ、あの皆の楽しげな様子を。
お前がいるからこそ、皆もあのように楽しめるのだ。
・・・忘れるでないぞ?」

「・・はい。」

「なによう、全然呑んでないわよう〜?吉良!!」
「・・乱菊さん・・酔ってますね・・。」
「さあ!呑みなさい!!」
「ああ、ちょっとこぼれるこぼれる!!」
「え?!!あたしのおっぱいこぼれてる?!!」
「なんでそうなるんですか!!」

「心配すんな。お前が脱ぐ時は俺も付き合ってやるよ・・。」
今日も修兵はイヅルの介抱係になりそうだ。

「あ、忘れてた。誕生日おめでとさん。」
「あ、俺も忘れてた。誕生日だったっけ。」


吉良、お誕生日おめでとう!!


みんなの声が重なった。


イヅルは少し顔を赤くした後、笑顔でこう言った。


「みんな・・ありがとう。」




・・・お誕生日おめでとう、イヅル。




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