整頓された机(檜佐木修兵)
「檜佐木副隊長!!この書類に目を通して、印鑑をお願いいたします!!」
「檜佐木副隊長!!総隊長殿よりの通達文です!!至急目を通せとのことです!!」
「檜佐木副隊長!!新しき守備地域の素案が出来た模様です!!」
「檜佐木副隊長!!先日、訂正を申し付けられた書類ですが、これでよろしいでしょうか!!」
「檜佐木副隊長!!人事異動の件ですか・・・」
「檜佐木副隊長!!見回りのお時間ですが!」
「檜佐木副隊長!!」
・・・・疲れた・・・・。
はっきし言って俺は仕事は速いほうだと思う。
けど、正直こんだけ仕事が来ると・・・・キツイ。
そういや今日は、朝から執務室に入ったっきり、一歩も外に出てねえな・・。
昼飯は、気を利かせた部下が持ってきた握り飯を3つ食っただけだっけか・・?
ハラ減った・・・・ていうか、タバコ吸いてえ・・。
もう夜もとっぷり暮れてる。
それでようやく、今日もメドが見えてきたくらいのもんだった。
俺が今いる執務室には、仕事机は2つある。
ひとつは副隊長の俺の机。もひとつは・・・東仙隊長の机だ。
公式には、『元』がつく。
東仙隊長は、俺たちを裏切って、藍染隊長や市丸隊長と共にウェコムンドに渡っていった。
・・・東仙隊長は俺に何時も言っていた。
『戦いは嫌いだ。
戦いには何時も血が流れる。
戦いのない世界。正義が常になされる世界。』
・・・それが、東仙隊長の望む世界だった。
現実とはかけ離れているが、理想としては俺も共感できるものだった。
俺たちは死神だ。
戦うために存在する。
でも、本当は戦いなんて無い方がいいに決まってる。
本当に戦いたくて戦ってるヤツなんざ、ほとんど居ないだろう。
殆どの奴は、已む無い理由で戦っていく。
そんな戦いがもし無くなる術があるのなら・・・・・・。
探したほうがいいに決まっているだろう・・。
だが・・・・隊長のやったことは理解できねえ。
理想はそれなりには分かると思う。
だが、その理想がどう転がれば、今回の謀反に繋がるのかは、どう考えても分からねえ・・。
チラリと目を向ければ、東仙隊長が座っていた席がある。
机の物は、あれ以来動かしてねえ。
・・ていっても、動かすもんもねえけどな・・・。
隊長は目が見えない。
だから、机の上はおろか、引き出しの中までも決まった場所に決まったものを仕舞うことにしていた。
机の上にあるものは何もねえんだ。
常に完璧に整理整頓された机。
・・・まるで理想そのものだな・・。
引き出しの中は整理整頓されてても、その整頓理由は隊長にしか分からねえ。
「君は自分の仕事を非常によくやっていると思う。
私は、君のことを高く評価しているつもりだ。」
確かに評価はしてくれてたのかもしれねえが・・・。
今、こうやって隊長の代理をしていると分かる。
東仙隊長は、俺に自分の仕事を何一つ任せなかったみてえだ。
これほど忙しいんなら、普通はもっと副官に回すもんだが・・。
ま、結局は、俺のことを何一つ信用していなかったわけだ。
吉良も同じ様なもんなんだろうな。
だが、雛森よりはまだマシか・・・。
なんせ、隊長が3人も抜けたんだ。
忙しくなるのは当然だろう。
吉良の所にも仕事は同じだけ行ってるはずだ。
藍染隊長が、またこっち(尺魂界)に攻めてくるっていう話もある。
やらねえといけない事は山済みだ。
一応九番隊の、隊長代理だからな・・・。
「いっそのこと、喫煙OKの隊にしちまおうかな・・。」
東仙は目が見えないだけに、鼻が利いた。
当然のことのように、九番隊ではほんの一部を除き禁煙だ。
隊を覆う言い知れない不安感。
東仙隊長と戦うかもしんねえんだから当然なんだが・・・。
東仙隊長が、何を考えてるかは分からねえ。
でも、尺魂界を滅ぼそうとする以上は、俺たちの敵だ。
確かに、今の体制はおかしい所はたくさんある。
でも、力でぶっ潰すのが正しいとは、どう転んでもならねえはずだ。
その時がくれば・・・俺は東仙隊長とも戦うだろう。
その覚悟は出来てるつもりだ。
けどよ・・・まだ心のどこかでまたひょっこり戻って来てくれるんじゃないかと期待しても居る。
今までの事を詫びて仕舞いには出来ねえが・・。
でも、どっかでまたこの執務室で一緒に仕事が出来るんじゃないかと思っている俺が居る。
いい加減切り替えねえと・・。
・・・よし、決めた。
何時か、隊長になるときには九番隊の隊長になる。
そんで、全面喫煙OKの隊にしてやる。
ついでに、女の子との合コンは週1回は必須だ。
・・・・何時になるかは分からんが。
でも、吉良や阿散井には負けたくねえな。
ま、これでも一応、先輩だからな。
オイ、隊長の机。それまでは、手をつけずにいておいてやるよ。
俺がそっちに移ったら、よろしく頼む。
・・・エロ本は入れると思うけど、上手く隠せよ?
・・・それまでは・・・
こっちの机で頑張るか。
なんちゃって。