戦場のクリスマス(一護と冬獅郎)

激しい戦いだった。
ようやく敵を退け、一息ついた黒崎一護が最初に見つけたのは、十番隊長の日番谷冬獅郎だった。

「勝ったのか?冬獅郎。」
「・・・まあな。そんなことより俺のことは日番谷隊長と呼べって言ったろうが。」
「言えるかよ。俺死神代行で、隊所属じゃねえんだぜ?敬称なんかつけられっかよ。」
「ったく、どいつもこいつも。」

「・・これからあんなのが、どんどん出てくんのかよ。」
「・・どんどんどころか、ますます強くなってくるはずだ。」
「たまんねえな。ったくよ。」
「じゃ、隠れて見ているか?」
「冗談じゃねえ。やってやらあ。」

「・・・・おい。この所気になってたんだが、なんでこの町は木に明かりなんか点して、飾ってやがんだ?」
「ああ。今クリスマスだからな。」
「クリスマス?ああ。何かの祭りだったな。キリストとかの誕生日だと何かで読んだ気がするが。」
「ああ。ガキどもはサンタって言う奴からのプレゼントを楽しみに待ってる。
ま、実際はガキ共の願いをかなえるのは、たいていは親なんだけどよ。」

「てめえも何か願ってたのか?」
「ガキのころはな。・・・ま、オヤジがどうあがいても無理なんだけどよ。
・・・それでも・・・願ってたな。」
「何を。」
「お袋を生き返らせてくれって頼んでた。ま、流石に中学入るとバカらしくなって止めたけどよ。」
「・・・そうか。」

「お前は?冬獅郎なら何を願う?」
「何も。」
「なんもつうこたねえだろ。なんも願いがねえのか?」

「願いはある。だが願いを叶えるのは俺自身だ。
サンタとか言う奴の手は借りねえ。」

「は・・・お前らしいな。」
「・・てめえは何を願うんだ?」

「この町の奴らを護りたいってことかな。」
「それもサンタにお願いするのか?」
「冗談じゃねえ。自分でやってやらあ。」

「・・てめえらしいな。」
「お互い様だろ?冬獅郎。」

「雪が降ってきたな。そろそろ引くか。」
「おう。」
「他のやつらの状況も把握しねえと。」

ちらちらと降る雪。
少しずつ量が増えていく。

「さみ。なあ冬獅郎。聞きたいことがあんだけどよ。」
「なんだ。」
「お前も寒いって思うのか?」
「お前・・・俺をなんだと思ってるんだ?化け物か?」
「でもお前の斬魄刀って氷雪系なんだろ?やっぱ寒さに強ええのかと思ってよ。」

「斬魄刀が氷雪系だろうが火炎系だろうが、寒い時は寒いし、熱いときは熱いんだよ。
多少の耐性が出来るくれえで、ほとんど変わらねえよ。」

「へえ。そうなのか。初めて知ったぜ。」
「それよりも・・・ハラ・・減ったな・。」
「うちで喰ってくか?ゆずの奴、飯はうまいぜ?」

「・・卵焼き作れるか?」
「当たり前だろ。」
「じゃ、行く。」
「でも今クリスマスだからな。
洋食じゃねえかな。」
「なんでもいい。まともに喰えりゃな。」


育ち盛りの死神が二人。


静かに帰路についていた。



雪は静かに降っている。




なんちゃって。


メリークリスマス。

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