獅子の舞(日番谷冬獅郎)

9月の終わりの頃だった。
冬獅郎が所要のため、一番隊に赴いたその帰り。
一番隊の広場の方から囃子の音が聞こえていた。


見れば、獅子舞が舞っている。

「・・ああ。そういや、そんな季節だったけか。」
収穫も終わり、農作業がひと段落するこの季節。
平民もそして貴族の間でも祭りは行われていた。

護廷十三隊においては、当然ながら祭のようなものは開かれないが、それでも獅子舞だけは奉納される。
何時もならば、各隊に赴いて舞を舞い、各隊の穢れを払ってきた。


しかし、今年は、藍染惣右介の謀反により獅子舞どころではなくなってしまったのである。
それでも、十三隊を代表して、一番隊のところのみ獅子舞を奉納することになっていた。

護廷十三隊に奉納される獅子舞は、冬獅郎が育った流魂街の獅子舞とは違う。

流魂街の獅子舞は、猿股を履いた男たちが、上下左右に激しく動きながら、時に獅子頭の口を開閉させるダイナミックなものだった。
幼い子供たちは、わざとその獅子に噛まれる事によって、厄を祓ってもらうのである。

護廷十三隊の獅子舞は獅子頭の口は開閉出来ない。
舞手は猿股ではなく、濃紺の着流しを身につけている。
そのためしゃがんだり、大きく足を開いて動く事はしない。
頭を担当する者と、体を担当する者の息の合った静かな舞であった。

流魂街の獅子舞を『動』とするならばこちらの舞は『静』と言えるであろう。

しかし、獅子舞の目的は同じだ。

災厄を祓い、人々の幸福をもたらす。

その役割を獅子が負うのは、その強さと美しさにある。
人々の願いは、百獣の王に具象されているのだ。

静かに舞う獅子舞に、見る者は何時に無く真剣な眼差しだ。


冬獅郎は、己の隊に戻るべく歩き始めた。

もうじき・・・尸魂界に最大の災厄がやってくる。
裏切り者藍染が、おびただしいホロウを従えて。


尸魂界を破壊するためにやって来るのだ。

「・・・舞なんか舞っても、そっちの方は祓えねえしな・・。」


十番隊隊長、日番谷冬獅郎。


其の名に獅子をいだく者。

「俺が祓ってやる。・・・藍染。」


彼の望みも、『災厄を祓い、人々の幸福をもたらす事』だ。



彼の行動こそが、『獅子の舞』なのである。






なんちゃって。

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