小児科医、日番谷冬獅郎
・・・巨大基幹病院、BLEACH。
その小児科病棟に、この病院における最年少医師がいる。
正確には日本で最年少の医師だ。
その医師の名は・・・日番谷冬獅郎という。
「ああ〜〜!!病院に子供の先生がいる〜〜!
お医者さんごっこなの?」
「あ・・あの・・?」
不安そうな母親が医者の隣に控える看護師を見やる。看護師は「大丈夫だ」というように、にっこり笑う。
「誰が子供だ。ちゃんと正式の医者だ、俺は。
熱でてる奴がはしゃぐな。熱が上がるだろうが。」
初めて、日番谷を見る者は大体が同じような反応を示す。
当然だろう。
なんせ、未成年の医者だ。
だが、外国においてちゃんと医師の国家試験に合格し、なおかつ研修を積み、最年少医師免許を取得した日番谷だ。
今更そんな反応には動じない。
日本に帰国する際、医者として働くことを厚生労働省は相当、迷ったようだが、日番谷の経歴書を見て、結局許可することとなった。
外国における、超一流の病院の第一線で働いていたからだ。
「38度か・・元気はあるようだな。ちゃんと食ってるか?」
「う〜〜ん・・あんまり欲しくないけど、アイスは食べてるよ?」
「そうか・・・。お母さん、お子さん下痢とかはしてませんか?」
「ええ・・おなかは大丈夫のようです・・。」
「・・そうですか。じゃ、風邪薬を処方しましょう、熱が38.5度を超えて、ツライように見えたら、熱さましの下剤を入れてやってください。
とにかく水分を取らせること。
元気がなくてぐったりするようでしたら、早めにまた連れてきてください。
お薬は顆粒状とシロップ、どちらがいいですか?顆粒・・て普通分からねえな。
粉の薬です。甘みがあるので、苦くは無いです。
「ええと、一応シロップで。」
「分かりました。3日分処方・・て、出しておきます。じゃ、これでいいです。お大事に。」
「先生〜〜!また遊びに来るね〜〜!」
「ここは遊びに来る所じゃねえ。調子が悪いときに来る所だ。
ガキは元気が一番だ。あんまり来んじゃねえぞ?」
的確ですばやい診断は親には安心感を、若い外見は子供には安心感を与えるようだ。
「ふふふ・・日番谷君たら、すっかり友達扱いね。」
顔を出したのは、同じ小児科医であり、幼馴染の雛森桃だ。
「日番谷先生だ、雛森。席次はお前の上。」
「はいはい。午前の診療終わったんでしょ?一緒にお昼ご飯食べよ?」
まったく気にしてない、幼馴染の様子に、日番谷はため息を漏らす。
・・・日番谷が、外国で医師免許を取得するには訳があった。
日本においては、どんなに才能溢れた者でも、学年を飛ばして進級することが出来ない。
要するに、どんなにあがいても学年の差を努力で詰めることが出来ないのだ。
それで、外国に行った。
研修期間に入って、雛森が当初の脳下希望から小児に変わったことを聞き、日番谷も小児の道に進むことにした。
雛森が転向した理由は、雛森の尊敬する医師に、小児の方を進められたからだという。
雛森がその医師を尊敬するようになったきっかけは、雛森の父の脳腫瘍により、担当することになったその医師に会ったためだった。
高い実績を持つ医師だった。
経歴を見ても、輝かしいものばかりだ。人格を見ても完璧だという。
感化された雛森は、それ以来医者を此処を座すようになった。
藍染の下で働きたいという。
日番谷もその当時藍染と会ったことがある。
完璧な医師だった。なのに何故か日番谷は危険を感じた。
何がどう、というのではない。
日番谷も上手く表現できなかった。
雛森の父は重大な腫瘍で、藍染でなければ手術できないと言われたものだった。
そのまま放って置けば、1年持たないという。
藍染は手術によって、その寿命を5年延ばしたのである。
誰もが藍染に感謝した。
しかし、日番谷の違和感は消えなかった。
「・・あいつの下になってなくて、正解だったかもしれねえな・・。」
脳下は、精神的にもキツい所だ。もちろん、小児は殺人並に忙しいが、子供に優しい雛森には確かに向いていると思う。
「え?何が?」
職員食堂の、オムライスをつついている雛森が、聞きかえす。
今も藍染のことを深く尊敬している雛森。
藍染と話す機会があったときなぞ、舞い上がって落ち着けるこっちが大変だ。
「なんでもねえ。」
同じ診療科にいる以上、何かあったときは助けてやれる。
そのためには、前を走り続けねえと・・。
午後の診療に頭を切り替える日番谷だった。
なんちゃって