執着(ウルキオラ・シファー)
・・・ウルキオラはコントロール室に向かっていた。
現世のゴミ共の所在を把握するためだ。
断わっておくが、ウルキオラの探査能力(ペスキス)は高い。
ツンデレウサギのお耳にかけても、他の十刃に劣ることはないだろう。
けれどもその能力を持ってしても、特定の侵入者の正確な位置を把握するには、虚夜宮は余りにも広かった・・。
藍染惣右介からは自宮待機が言い渡されている。
だが、ウルキオラにはどうしても知りたい事柄があった。
コントロール室に行くと先客がいた。
・・・市丸ギン。
藍染の副官とされる男だ。同じく統括官の東仙要も側近中の側近と言えるだろうが、藍染に最も近いのはこの市丸だろう。
・・・何を考えているか読めない男だった。いつも笑いを口元に浮かべているが、腹の底から笑った様子は見たことが無い。
藍染がこのような底の知れぬ男を傍に置いているという事は、ウルキオラにとっても理解できぬところである・・。
コントロールパネルには、侵入者の場所が灯りが点灯している。
誰がどこに居るのか一目瞭然だ。
ウルキオラは素早くその位置関係に目を通した。
・・メガネゴミ(雨竜)、貧乳ゴミ(ルキア)、粗大ゴミ(チャド)・・・赤毛ゴミ(恋次)に・・・居た・・殺すに足りぬ唯のゴミ(一護)だ。
『・・思ったよりも・・近いな。』
近いというのは、ウルキオラが守護する宮に近いのではない。
それならば、何の問題もないのだ。
問題なのは、一護が通っているのが、グリムジョーが守護している宮に近いということなのである。
このまま行けば、グリムジョーと一護があたる可能性が高い。
唯でさえ、グリムジョーは一護の事を自分の獲物だと勘違いしている節がある。
一護につけられた胸の傷を後生大事に残しておいたり、戦う時には真っ先に一護の方へ飛んで行ったり、十刃の会議の時でさえ、一護の姿を見るや、藍染様の指示もないまま飛び出していこうとした。
・・・自宮待機は出ているが、あの男の事だ。
・・・大人しく待っているとは思えんな。
勘違いしてもらっては困る。
あのゴミは・・俺の獲物だ。
あのゴミをどう処分するかは、藍染様に最初に俺に命が下った段階で、俺の管轄下にある。
それを他の奴がしゃしゃり出てくることなど、許せん。
あのゴミを生かすも殺すも俺がやる。
それは藍染様も了承済みだ。
あのゴミがグリムジョーを倒す実力があるならば、放っておくところだが・・・。
『・・今の実力ではあのゴミがどうあがいても、グリムジョーは倒せまい。』
その時コントロールパネルを、ギンの骨ばった男にしては白い指先が滑っていった。
回廊操作だ。
この操作は・・一護が通る回廊をグリムジョーの宮から遠ざけるものだった。
すると、ギンがウルキオラの方へ向き直る。
そして、人差し指を口に当ててにやりと笑った。
「・・秘密やで?
この子・・グリムジョーに取られとうないんやろ?
はよ、行った方がええで?
他にも自宮でええ子にして待っとれん子たちも居るし。」
・・・この男・・。
やはり得体の知れん男だ。
だが、あのゴミの処分は俺がすると決めている。
「・・失礼します。」
コントロール室を出る。
扉が閉まる音が完全に消えた次の瞬間。
ウルキオラは響転(ソニード)で、高速移動を開始した。
あのゴミは俺の物。
誰にも邪魔はさせない。
あのゴミの処分は・・俺がやる。
他の奴には触らせない。
・・・俺のものだ。
なんちゃって。