垂れウサギ(ウサキオラ・シファー)←?
真っ暗な閉鎖空間で、ウルキオラが独り膝を抱えて座っている。
仮面の耳が明らかに伸びている。
ウルキオラの感情に、明かな変化がある証拠だ。
ウルキオラはツンデレだ。
虚圏一のツンデレを誇っている。
彼に匹敵する可能性があるとすれば、尺魂界一のツンデレとされる朽木白哉か、現世一のツンデレとされる石田竜弦くらいなものだ。
ツンデレは当然、感情をあらわにしてはならない。
しかし、表にあらわさなくとも、何らかのその感情の発露を何所かに出すというのがポイントなのである。
ウルキオラはその耳こそが、その感情の発露なのである。
怒り、喜び、悲しみ。
そんな感情をこっそり仮面の耳を伸ばす事で表現する。
だが、この時言動に出してはならない。
それがツンデレの鉄則なのである。
ウルキオラは怒っていた。
無論、グリムジョーに対してである。
織姫を連れ去ったことも、せっかく自分のお気に入りマークを気持ちよく入れた黒崎一護の傷を治したこともにも、当然怒っていた。
しかし、何よりも怒っているのは、自分をこんな空間に閉じ込めたことである。
『反膜の匪(カハ・ネガシオン)』は十刃を対象として作られたものではないから、何もせずとも2時間もあれば、閉鎖空間の壁は崩れ落ちる筈だ。
しかし、その時間がウルキオラには途方もなく長く感じられた。
・・・ウルキオラは・・・一人ぼっちが嫌いだった。←爆笑
だから何か行動する時は、出来るだけ誰かを一緒に連れて行く。
「来てくれ。」なんぞとは言わない。ツンデレのプライドにかけて「来い」と命令する。
無論、寂しさなんぞは表情には出ない。
今も膝小僧こそ抱えてはいるが、翠の眼は感情を映さずに大きく開かれ、虚空の一点を眺めている。見事な無表情だった。
しかし、その小さな頭の中ではこの寂しさを紛らわせるために、グリムジョーをどうしてくれようかと考えていた。
グリムジョーに効くのは無視なのだが、最早そんな状態ではない。
織姫を向こうに握られている以上、こちらも引くことはできない。
やられたら、やりかえす。
ツンデレウサギのお耳にかけても許さなくってよグリムジョー。←なんかの標語?
以下、制裁案(素案)
<1>ご自慢の肉体に油性マジックで落書き。
文字は、「駄犬」、「棄て犬」、「かませ犬」などを左右の胸筋に書く。
いや、この際ヤンキーらしく、「夜露死苦」とかにすべきだろうか。
「お仕置き上等v」とかもいいかもしれない。
<2>腹に開いている虚の穴に手を突っ込んでガタガタさせる。
ていうか、あの大きめの穴広げたる。自分の顔が入るくらいに広げたる。
<3>グリムジョーの虚穴の背中側の穴から顔を突っ込んで、そこから会話する。
自分の穴を通じての会話はさぞかし嫌がるに違いない。
<4>いっそあの腹の穴埋めたろか。
長ネギ何本入るかやってみたいものだ。
「・・・どれもイマイチだな・・・。
独創性にかける。」
そこまで考えて、膝小僧を抱えたウルキオラは一人呟いた。
・・一人ぼっちは嫌いだ。
一人でいるのは嫌いじゃない。だが、誰かが霊圧を感じる距離に居ないと落ち着かないのだ。
誰がどこにどういう距離で居るのか。それはウルキオラにとってはとても重要なことだった。
だから、ペスキスは誰にも負けないくらい発達している。
でも・・・此処は自分以外、何の霊圧も感じない。
・・一人ぼっちは嫌いだ。
・・暗い所も嫌いだ。
・・・何時の記憶かは解らないが・・・。
何かの罰として暗くて狭い所へよく閉じ込められた覚えがある。
虚となると、生前の記憶は徐々に無くしてしまうものだが、この記憶だけはなくならない。
暗くて狭い所に一人ぼっちでいる記憶だ。
・・・寂しくて・・怖くて。
自分が壊れそうになるのを防ぐために、感情を無くしていった。
感情が無くなれば、寂しいなどと思わないはずだから。
だが、未だに苦手なのは変わらない。
「・・くそっ。」
だから、自分をこんな目にあわせたグリムジョーは許さない。
ウルキオラの耳がまた怒りで伸びる。
「・・・・・。」
漆黒の闇にはウルキオラが唯一人膝を抱えて、耳を伸ばしている。
・・・・そして寂しさに、少し下に耳が垂れていった。
なんちゃって。