天才画伯、朽木ルキア

・・・「画伯」。

絵の才能に優れた者を指すこの言葉・・。
そして、十三番隊所属、朽木ルキアは自らを「画伯」であると確信していた。

意外に、根拠がないわけではない。
自らを画伯であると確信する以上、ただ絵を描くのが好きというだけでは収まらないのは当然だ。

真に天才画伯と言われる絵は、絵のタッチでその画家の作品であると分かるのだそうだ。
他の画家には表せないタッチ、色の使い方、構図。
それを万人が認識したとき、真の天才画伯であると少なくとも朽木ルキアは考えていた。

そして、自らはそれを持っている。
いかなる絵でも、ルキアの絵を知る者は、たとえその絵を初めてみたとしても、その作者がルキアであると確信する。しかも迷うことなく、断言する。
何を描いたとしても、その作者が朽木ルキアであると断言させる才能。


・・これを持つ自分が画伯たりえずして、いったい誰が画伯と言えようか。

朽木家に養子に迎えられ、英才教育を受けたルキア。
その英才教育の中には、芸術も当然含まれている。
ルキアは絵を描くのが好きだった。動物の絵を描くのは特に好きだ。
それを見た絵の教師は顔を引き攣らせながらも、「大変ルキアさまらしさが出た、作品かと・・。」と褒めた。

そして、ルキアに最大の自信を与えたのが、ルキアが尊敬する兄、白哉の一言である。
無口なこの兄、ひょんな機会にルキアが描いたウサギの絵を見ることがあった。

何でも人並み以上の腕前を持つと言われる白哉の眼には自分の作品はどう映るのだろうか。
思わず背筋が伸びるルキアだった。
すると白哉は無表情のまま、顎に手を添えて見入っている。
これは、白哉が興味をそそられたという証拠だ。

『兄様が・・・!!わたくし如きの絵に興味を持っていただけるとは・・!』
何と感想を漏らすのだろう。ドキドキするルキア。

「・・お前独自の世界観が見事に確立された絵だ。

・・よい出来だな、ルキア。」

「も・・もったいないお言葉です!兄様・・!」

『こ・・これは何かの幻か?!あ・あの兄様が褒めてくださった!!!!』
正直、ルキアは飛び上がって喜ばなかった自制心を褒めた。
あの白哉が褒めたのだ。
今まで鬼道にしろ剣技にしろ、今まで白哉がルキアを褒めたことなど一度として無い。

白哉は自分が基準の人であるのだから、ルキアの実力では褒めるに値しないのは致し方ないのかもしれないが。
それにしたって、その白哉がルキアの絵を褒めたのだ。これは極めて珍しいと言えよう。

『・・・今までそうではないかとは思っていたのだが・・!

今。ここに私は確信した・・!!

私は・・絵の才能が確かにある・・!!』


今まで、散々ルキアの絵をこき下ろしてきた恋次、そして十三番隊の隊士たちの顔が次々と浮かぶ。
しかし、自分は兄様に認められたのだ。今すぐ皆に自慢したいところだ。
自分の腕は確かなのだ。認めぬ目の方が過ちなのである。
しかし、自分は朽木家の人間。
あまり出すぎた行動も慎むべきだろう。


そして、その後ひょんな機会で白哉が遥か昔に描いたと言う絵を見ることなった。
ルキアは戦慄した。

「な・・なんという・・!!なんという才能・・!!!」

・・・キュウリを擬人化したその作品。

未だ、画伯ルキアがその腕前が兄には遠く及ばないと思い知った瞬間でもあった。



自称天才画伯朽木ルキア。


まだまだ、絵の方も兄には遠く及ばないようだ。





なんちゃって。

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