手の中の雛(藍染惣右介)

雛森くんは・・・可愛いね。

「藍染隊長!!あの・・・この書類なんですが、これでいいでしょうか。」
今日も雛森くんは頬を赤らめながら、一生懸命に仕事をしている。
僕に認められようとして必死になって頑張る姿は、笑みを深めるには十分だろう。
「ああ。いいよ。仕事が速くなってきたね、雛森くんは。・・・嬉しいよ。」

ますます、頬を赤らめる彼女。

・・・可愛いね。

彼女は僕に全面の信頼を寄せている。
それは僕が彼女の理想の男性像だからだ。

大人で穏やかで、思慮深く、包容力がある男。
自分を絶対に否定せずに、認めてくれる男。
そして自分に絶対安全な男。


・・そうだろう?雛森くん。


君は思い込みが強いからね。
恐らく僕のことしか見えていないだろう。
自分の理想の体現者。
その「僕」に認められるためならば、君はどんな努力も厭わないだろうね。

君の幼馴染みが、どんなに君の事を心配していても、君には興味がない、といったところかな?

だが残念なことに、「僕」はもう直ぐいなくなる。
君はきっと悲しむだろうね。
でも君は連れてはいけない。

なぜなら、君は僕を理解できないし、君の理想と違う僕を理解しようとも思わないだろうからね。

僕が必要とするのは、僕を理解できた者だけなんだ。

だから君は必要ない。
でも君は僕を必要だろう?
君が最も恐れていることは、拒絶されることだ。
自分が愛される存在だと心のどこかで思っているね?
だから、拒絶されると怖いはずだ。・・・違うかい?

すまないね。・・・でも君は必要ないんだ。
本当に。

理解する能力の長けた者以外は必要は無い。


だから君は死ぬといい。


君は無垢な魂を持っている。
でも知っているかい?無垢と無知は隣り合わせだということを。
だが君は無垢ゆえに可愛いんだよ?
だから変わる必要は無い。

僕が何も知らずに死ねるようにしてあげよう。

出来れば、僕の手は汚したくないな。
そうだね。君の同期か日番谷くんにでもやってもらうとしようか。

雛森くんは可愛いね。
まるで僕の手の中にいる雛のようだった。
鳥類は生まれて初めて見たものを親だと思い込む。
刷り込みと言うんだが。
君は正しくそうだった。

・・可愛かったよ。
そのまま変わる必要など無い。

だから君は無垢な雛のままで死にたまえ。




それが君には最もふさわしい。




なんちゃって。


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