小さき光(黒崎一護)

7月のころ。
黒崎一護が、夜、死神代行の仕事から帰ってきたときのことだ。

2階の自室に窓から入ろうと窓を開けたときのことだ。

1匹の蛍が部屋へと迷い込んだ。

一護の肉体の留守番をしている、コンは早々に寝てしまっている。
よって、部屋に明かりはない。
真っ暗な一護の部屋の中を、小さな光が飛んでいる。

「あ〜〜あ、お前こんな所に来ても何もねえぞ?」

そのまま、まず自分の体へ戻った一護。
ベッドから起き上がって、部屋の電気を点けようと手を伸ばそうとする。
しかし、何故か電気を点ける事を止めてしまった。

消えたり点いたりをゆっくり繰り返しながら、部屋の中を浮遊する蛍。
外から帰ってきたため、夜目のままだ。

そして蛍を傷つけないよう両手で慎重に、捕まえる。

両の手の隙間から光がもれる。
手が光っているような不思議な感覚だ。

体長は2センチにも満たないだろう小さな虫。

「スゲエよな・・・。こんなに小さくても自分でちゃんと光ってんだもんな・・。」


蛍は光る。

自らの存在を示すのだ。

その身を光らせることによって。


・・・「自分はここにいる。」と。



なんか・・・・かわいいよな。
必死で光ってるんだぜ?
もっと光ってやろうと、必死でやってるんだ。


俺もそうだ。
もっと、強くなろうと必死でやってる。
イヤ、俺だけじゃねえ。

みんな自分を光らせようと必死にやってんだ。
それには色んな光があって、何色が良いだなんて一概には言えねえよな。

何色が良いだなんだという奴はいっぱいいるけど、皆同じ色で光ってんのって、俺は正直異常だと思う。
俺たち一人ひとりが、顔も性格も違うみたいに、その光だって色んなのがあっていいんじゃねえ?
何色じゃなきゃいけねえなんて法則、俺は無いと思う。


いいんだよ。何色だろうが。
・・そだろ?

『自分で決めて、自分で光る。』


それが重要なんじゃねえかと俺は思う。


・・・負けれねえよな。

こんな小さい虫が光ってんのによ。

知ってるか?蛍ってちゃんと匂いがするんだぜ?
なんつったら良いのかな。

ちゃんと命の匂いがするんだ。
ああ、こいつ生きてるんだなって思えるような。


窓は開いたままだ。
・・・さ、行きな。お前の仲間のところへ。

窓の外へ両手を差し出し、手を広げてやる。


途端に、飛び立つ迷い蛍。


・・・・そういや、ルキアが言ってたな。
死神に比べれば、人間の寿命はもっそい短いってよ。

死神から見れば、人間なんて蛍みてえなものなのかもな。


ま、いいじゃねえか。
それならそれで・・・。


こっちは・・・命の限り、光ってやる。



それが、どんな小さい光だろうが、ぜってえ自分で光ってやる。







なんちゃって。

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