闖入者<ちんにゅうしゃ>(雨竜と喜助)
・・窃盗・・・。
無論重大な犯罪だが、昨今家宅侵入して窃盗を働く手口も、多様化している。
鍵のかかっていない家を狙う初歩から、窓ガラスを割るという手口、玄関の鍵穴を開けるピッキングからドアに穴を開けて鍵ごと回すというサムターン回しまで様々だ。
しかし、最も大掛かりかつ、家主も考え付かない進入経路とは・・・壁に穴を開けて侵入するという手口ではなかろうか・・・。
・・・空座総合病院、隠し部屋・・・。
その存在さえも知る者は少ないその部屋に、今闖入者が現われようとしている・・・。
闖入者は・・・部屋の主しか知らぬ開け方の鍵を狙うのではなく・・なんと壁そのものに穴を開けて進入した・・・。
キキ・・・キキーー・・・。
小さな金属音とともに、25センチもの鉄筋コンクリートの壁に丸い線が引かれていく・・・。
そして、ほぼ円を描くようになったころ、その音はピタリと止んだ。
続いて聞こえてくるのは・・・ギギギ・・・という密室に似つかわしくない開閉音だ・・・。
なんと・・幅25センチのコンクリートに・・円形の扉が開いているのである。
無論、ありえるはずがない。コンクリートの壁に後付で扉をつけるなど、即席で出来るはずがないのである。
しかし、事実扉は開いている。
中に進入してきたのは・・怪しい自称ハンサムエロ店主浦原喜助と・・最後の滅却師だったはずなのだが、パパも滅却師だったことが発覚した上に自分よりも強かったと判明した石田雨竜である。←ヒドイ。(笑)
ちなみにこの侵入における主犯は雨竜、共犯は喜助ということになろう。
この侵入手口を考え付き、また示したのは喜助だが、それを別の事に使おうと思いついたのは雨竜である。
雨竜の戦友である一護の現状を伝えた喜助に、雨竜はこう申し出た。
「浦原さん、その(どこでも缶きりDX)←仮称(笑)で、もう一箇所入りたいところがあるんですが。」
「それはかまいませんけど・・。何処に入るつもりなんスか?
あんまり悪い事には使いたくないんスけどねえ。」←無断侵入は悪くはないのか?喜助。
「大丈夫です。建物内ですし時間は取らせませんから。」
そして・・病院内の隠し部屋に出来るはずの無い扉が開かれたのである。
「なんスか?ココ。」
隠し部屋は意外に広い。壁には見たこともないような武器がかかっていた・・・。
見るだけで分かる。ここには滅却師の武器庫なのだ。
「・・今じゃ使われなくなった、滅却師の武器庫だよ。
僕もあいつから、聞いて初めて知ったんだけどね。」
「ああ、お父様から〜〜。
じゃ、なんでお父様に開けてもらわないんスか?」
「あいつは僕が黒崎に関わる事を嫌っている。
黒崎は死神だからね。
それに、黒崎は死神代行だ。
僕は滅却師の力をあいつに戻してもらうために、死神に今後関わらないという誓いをしている。
・・事情を説明しても、納得してもらえる可能性は低い。
・・・・・。
・・・時間の無駄だよ・・。」
「・・そうです・・かねえ。
あ、でもここの武器は使っていいって許可受けてるんスよね?」
「いいや、受けていない。」
「・・・それって・・大丈夫なんスか?」←もっそい迷惑そう。
喜助が扇子で口元を覆う。いかにも親子の面倒には関わりたくないようだ。
・・・さもありなん・・。←(笑)
「ここにある武器は滅却師が使うものだ。
僕はあいつから正式な滅却十字を貰っている。
つまりは、滅却師として認められたからだ。
つまり、この武器を使う権利がある。
・・事後承諾ですむはずだ・・。」
「・・しかしですねえ〜〜。」
「浦原さんには迷惑がかからないようにするつもりです。
一応、置手紙で事の推移は伝えるつもりだし。
もちろん、帰ってからも僕から報告する。
さて・・時間もない。
これと・・これ・・。
これももって行きたいけど、少し大きすぎるな。移動に支障があるようではダメだし・・。
ああ、これも数本持っていくことにしよう。
浦原さん。もういい。行きましょう。」
「分かりました。あ、ちょっと待ってくださいね?」
「・・・。
何をしてるんです・・?」
「壁を元に戻してるんですけど・・。」
「時間がないんでしょう?そんな事はどうでもいいです。さあ、先を急ぎましょう。」
「アナタは虚圏に行ってしまいますけど、アタシはこっちにいますからねえ〜〜。
石田サンのお父様に睨まれるのはゴメンですので。
怖いですしねえ〜〜。
・・さ・・これでよし・と。」
開けられたはずの扉は、また何事もない分厚い壁へと戻っていた。
流石の雨竜も喜助の技術を、理解する事は難しそうだ。元に戻った壁を見て、驚きの表情を隠せない。
「じゃ、僕はあいつに手紙を書きます。時間は取らせません。1分もあれば十分です。」
さらさらと便箋に何事か書き付けて、几帳面に封筒に入れ、封までして誰にでも分かる所に置くところが、いかにも雨竜らしい。
そして、喜助が最初闖入した扉もまた・・元のように戻されて消えていった・・。
恐らく侵入経路さえ分からないだろう。
・・・そして、いるはずの雨竜は消えていた。
雨竜の父、竜弦にしか開けられぬ、隠し部屋にあるはずの滅却師の武器を伴って・・。
残された部屋はひっそりと静まり返るのみだ。
・・・あとには・・真白の封筒が・・唯一通残されているのみ・・・。
闖入者の唯一つの手がかりだった・・・。
なんちゃって。