突然変異の塵(ウルキオラ)

・・・・我等は破面・・・。
・・・・絶望に支配された世界に住まう者。

・・・・そこには何もない。

・・・・ただ・・・あるのは・・・『あの方』だけだ・・。



「ウルキオラ。・・少し頼まれごとをしてくれないかい?

現世に黒崎一護という少年がいる。
人間でありながら、死神の能力を身につけた少年だ。

今は取るに足らない力しか持たない少年だが、なかなか成長スピードには興味深い物があってね。

死神の力を手に入れてから卍解に達するまでに数ヶ月しかかかっていないんだ。

その少年の力を見極めてきて欲しい。
そして、我々の妨げになるようなら・・・処分して来て欲しいんだ。
オレンジ色の髪に黒い卍解の持ち主だ。恐らく直ぐに分かるだろう。」

「・・・・かしこまりました。」

これが俺の受けた藍染様からのご命令だ。

・・藍染様が、人間などのゴミに興味を持たれるとは思わなかった。
だが、あの藍染様が興味を持たれるほどのゴミだ。
慎重に進めるに越した事はあるまい。

・・・・あの方は慎重な方だ。
今はゴミ同然でも、後の脅威になるものは全て処分される。

そして、俺はヤミーと供に現世に降り立った。
どれもこれもゴミばかりの街だ。

思ったよりも、標的は直ぐに見つかった。
ヤミーに戦わせる事は、予め決めていた事だ。

俺はその戦いぶりを見、情報収集とその処理を行い、脅威となるかどうか判断する。

確かに変わったゴミだった。
言わば、突然変異のゴミだ。

珍しいのは確かだが・・・大した事はない。
だが、その評価は奴が卍解し、ヤミーの腕を切り落とした段階で揺らぐ事となる。

理由は分からないが、急に奴の霊圧が上下に揺れだしたのだ。
下は今まで俺が感じていた霊圧。
・・・上は・・・この俺を超えている。

不安定で、何処に落ち着いていいのか分からないといったような霊圧の揺れ。
奴は必死で抑えようとしている。『下』の霊圧で。

・・・・確かに珍しいゴミだ。
突然変異というものは、そうそうコントロール出来るものではない。
殆どの場合は予測不可能だ。
しかしだからこそ、貴重なものが生まれることがある。

・・当然それには危険も伴うが・・・。

殺すのは簡単だ。それで終わる。
だが・・・この突然変異をまた同じように作る事は、今のところは藍染様にもおできにはならないだろう・・。

・・・もう少し様子を見るか・・?

成長率はかなりのものだ。
だが、あまりにも不安定だ。自滅する確率の方が高い。
だが・・・直ぐに消すには惜しい。

貴重な突然変異だ。利用価値があるのなら、残しておいた方がいい。

・・・藍染様の為に・・。



・・・ここは生かしておいてやろう。突然変異のゴミ。
・・ああ黒崎一護とか言ったな。
今のお前には殺す価値もない。
この俺に殺されるのならば、それなりの価値を持つべきだ。

突然変異の役目は、意外な能力を発揮する事だ。
それ以外に価値はない。
お前はせいぜい、それを伸ばせばいい。

ただ・・俺の裁量の中でだが・・。

・・・予想外の能力を、俺の裁量の範囲内で伸ばす。
それがお前の生きる価値だ。

それを超えれば、お前は死ぬ。

俺が始末をつけてやる。


・・・全ては藍染様の御為に。


・・・俺たちは藍染様に造られた。


俺たちが恐れるのは、死ではない。
藍染様に「お前はもう用済みだ」といわれる事だ。


・・・俺たちは藍染様の役に立つためだけに存在するのだ。


藍染様の傍に1歩でも近づく事を許されるように、俺たちは全てをかけている。
あの方に名前を1回でも名前を多く呼んで貰える様に、1つでも順位を上げようと、虎視眈々とチャンスを待つ。

その為には、藍染様の想定された範囲内で、最も高度なレベルでの仕事をすることだ。



・・・・あの方の御為に。


・・・・俺たちは絶望の世界に住んでいる。
・・・・ここにあるのはただ、絶望だけ。

・・・・あるのはただ・・・『あの方』のみ。

俺たちは皆、絶望にも似た想いを、あの方に抱く。

・・・・誰よりも貴方の御為に。
・・・・誰よりも貴方に名前を多く呼んでいただけるように。
・・・・誰よりも評価していただけるように・・。


・・・・俺たちが恐れるのは『死』などではない。

俺たちが恐れるのは・・・・貴方に「用済みだ」と言われることなのです。


・・・・・黒崎一護。
お前は、俺が取った最大のリスクになるだろう。

・・・せいぜいもがき、あがくがいい。
・・・そして、出来れば手駒になるくらいには育ってもらいたいものだ。




・・・・全ては・・・藍染様の御為に。
・・・・それだけが俺の存在する理由だ。
・・・・他に俺には理由はない。



それが・・・あの方に創造され、あの方の為にのみ存在する・・俺たち破面の宿命だ。

・・・逃れられない・・同時に誰も逃れようとしない宿命だ。






なんちゃって。

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