投票結果発表の影で(藍染、ギン、ザエルアポロ)

・・現世で第4回BLEACH人気投票結果が発表された。
その速報はいち早く虚夜宮にも伝えられる。

1位から10位までだ。
そこには、虚夜宮勢としては、4位のグリムジョー、10位のウルキオラがランキングの中に入っていた。

空間に映し出されたスクリーン。
その結果を、優雅に椅子の肘置きに肘を付きながら眺めているのは、この城の王たる藍染惣右介である。

「グリムジョーとウルキオラが入ることは予想していたが、グリムジョーが4位になるとは意外だったな。ちょうど、投票時期に本誌で戦っていたせいもあるだろうが、想像以上の健闘だ。

敵側のキャラが上位に食い込むのは興味深いね。
・・そうは思わないか?ギン。」

「そうですか?あれだけ闘ってる姿出してもろて、一度十刃落ちやなんやてイベントもあったしなァ。
本誌の露出多かったら、票が入るんも可笑し無いと思いますけど。
まァ、ええんちゃいます?」

後ろで一歩控えて立つ副官は、何やら不機嫌なようだ。
態度には全く出ていないが、藍染にはわかる。


「そういえば・・もう一人ランキングに入ってもおかしくない者がいる筈だが・・。

今回は、どうしたんだ?ずいぶん調子が悪いようだが。」

「出番が無いですからなァ。仕方ありませんわ。」
「いたずらが過ぎて、ファンに飽きられてしまったのかい?」

ギンはあまり出番があるタイプではない。が、ファンは底堅い。
実際、前回前々回とトップテン入りを果たしているだけに、今回の結果が藍染には面白いらしい。

「逆ですわ。ボクのファンはボクがいたずらした方が喜ぶんですよ?
いたずらする場面が少なすぎたんやと思います。
今回はボクの票がだいぶ、イヅルに流れてるようやし。」

「・・なるほど。」
「ボクの事より、藍染サマの方はどないなんですか?
前回は18位やったんでしたっけ?
ボク等のトップなんやから、もっと人気だしてもらわな。」

「私かい?私は一応"巨悪”のトップということになっているからね。
そう多くの票は入らないよ。
掲載される少年ジャンプは健全な青少年に読まれる雑誌だ。

巨悪である私に、あまり票が入るというのもある意味問題があるだろう。

私は多くの読者に愛されようとは思わない。正義を愛する若者たちに憎まれる存在でなくてはならないからね。

・・・・・真に私の魅力を理解してくれる読者の票が入ればそれでいい。」

「とか言いながら、真っ先に速報見てはりますやん。
なんやかんや言いながら、気になってはりますんやろ?」

「否定はしないよ。投票行動は興味深いものがあるしね。
なんでも、段ボール箱で票を送りつける者が頻発したようだ。」
「出番ほとんどないのに、入ってるんは大体段ボールの類やないんですか?
雛森ちゃんも、怪しいなァ。」

「だが、結果は結果だ。
彼女に、4102票をいれるファンがいるということは事実だ。
この結果で、少し彼女も元気になってくれればいいんだが。」
「おやま、その雛森ちゃんを殺しかけた張本人のお人の言うセリフとは思えませんなァ。」

「だが生きながらえた以上、有意義に過ごして欲しいと思うのはおかしくはないさ。
それに票の事だが、お前もやろうと思えば、本来の票を取り戻すことは簡単だと思うがね。

『今度はちゃんとボクに票入れてな?』とでも言えば、段ボール票は確実だろう。」


「そなな、ミエミエの事、恥ずかしゅうて、直前でもない限り出来まへんわ。」

「とりあえずは、11位以下の結果も見てみたいものだね。」

そう言い、次に藍染は誰もいない筈の場所に声をかけた。

「・・さて・・何時まで、そこでのぞき見をしている気かな?ザエルアポロ?」

ギンも気が付いていたのだろう。ニヤリと笑って、ザエルアポロが隠れている方向に目を向けた。
すると、ザエルアポロが姿を現した。

「アカンよ?のぞき見は。
結果が見たいんなら、正直に言えばええのに。」

「申し訳ありません!
敬愛する藍染様の順位が気にかかり、夜も眠れない日々を過ごしておりました!

本日結果が発表されると知り、いてもたっても居られず、無礼を承知で拝見しておりました!

この罰はいかようにも・・!」

「構わないよ。君の存在には最初から気が付いていた。

結果は見ての通りだ。残念ながら君の名前は10位以内にはない。今後発表される、結果を楽しみに待つことだ。」

「そんな・・!僕は藍染様の順位が気になるだけで・・!」
「正直に言うたら?『僕は藍染様より順位は上を狙ってます』て。」
「な・・!そんな恐れ多いことを僕が考える筈が・・!」

「君の本格的な戦いは投票時期の後だったからね。
少し時機を逃した感は否めないだろう。

だが、君のファンはコアなファンが多い。
次回の第5回の人気投票では君の名前ハガキが段ボールで来る確率は高いかもしれないよ?
今回よりも次回の方が君にとっては面白いだろうね。

ともあれ、一〇位までは見ての通りだ。
また続きは発表になったら、教えてあげよう。

・・それでいいかな?」

「お気遣いありがとうございます。
失礼します。」


藍染の部屋を咎なく、辞去できたザエルアポロ。

本格的な戦闘を見せる前の状態で、自分がどれだけ得票で来たのかが知りたかった。
自分が一部のファンに深く浸透していることをザエルアポロは知っている。
ファン層は狭いが深い。

この深い層のファンが段ボール票を投じてくれる。
と、すれば自分は有利なはずだ。

ギンが言ったように、今回の段階で、藍染の上を狙っている。
だが、それだけではない。
恐らく現時点で人気投票があれば、自分はギンをも抑えられるという自信があった。

「人気投票やり直してくれれば、もっとソソられる結果になるんだが。」

思わずすべり出た独り言は、ザエルアポロの本心以外の何物でもなかった。



なんちゃって。

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