束の間なれど平穏な時(黒崎一護)

新学期。まだ外は暑い。9月だからな。
日差しはきついが、学校の屋上はいい風が吹く。
今日はそんなに気温も高くねえし、俺たち・・石田、井上、チャドと俺・・は屋上で弁当を喰うことにした。

普段は文句を言う石田も、ジュースにつられてついて来た。

俺の弁当は妹の遊子が作ってくれているが、石田とチャドは自分でどうやら作っているらしい。
石田はともかく・・・チャドはナリはでかいが意外に器用だ。

井上は・・・・食パン1斤にピーナッツバターを瓶3個だ。
もしかして・・・あれ・・全部使う気か・・?

チャドは相変わらず、口数は少ない。井上は喋りっぱなしだ。何時の間に仲良くなったのか、石田が井上の話に突っ込みを入れている。

ああ・・平和だな・・・。

いつもの日常がこんなにも平和でかけがえのない物という事を、今回の戦いで、俺は初めて知った。

そして・・仲間がいるということがどんなにも心の支えになるのか、ということも初めて知った。

生きて帰れる保障の無い戦いに、こいつらは俺に命を預けてくれた。
ルキアを助けるという俺に・・力を貸してくれた。

・・・石田の霊力は、やはり無いみてえだ。
俺はよくは知らねえが、かなり無理をして戦った結果だって聞いた。
でもそんな事は、おくびにも出すような奴じゃねえし。
俺が謝ったところで、反って怒りを買うんだろうな。

・・あの戦いで、俺は実際強くなったと思う。

・・だが、強くなればなるほど、護ることがいかに難しいことなのか、分かってきた。
一つのことを護りきるっていうのは、直ぐに出来そうに見えて、その実スゲー難しい。

だが・・・俺は護りたい。

それも一つのことだけじゃダメだ。
俺の家族も、チャドも井上も石田も・・・学校の奴らも・・みんなだ。

別に俺はヒーローなんてもんになるつもりもねえし、なりたくもねえ。

だが・・・俺は護りたい。

前の戦いで、その想いがどんどん強くなっている。

・・『覚悟』だ。

以前、浦原さんが言ってた『覚悟』という意味が、ようやく分かったように思う。

半端な気持ちじゃ護れねえ。
迷ってたんじゃ進めねえ。

・・この平穏な時間が、少しの間だっていうのも気付いてる。
だが・・この平穏を乱す奴がいるというのなら、そいつをぶっ飛ばせばいい事だ。

・・・やってやる。

それが・・俺にやれることだと・・俺は知っているから。


屋上は相変わらず、いい風が吹く。
ここからの眺めは好きだ。

穏やかな時間。


・・・それを俺は護りたい。

なんちゃって。

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