月と獣(白哉と恋次)

「恋次、てめえ六番隊の副隊長になる気はないか?」

いきなりだった。
俺の所属する十一番隊、更木隊長から話があったのは。

「六番隊の白哉が副隊長を探しててな、実力からてめえの名前が挙がってる。」
「そりりん、副隊長になるの?すご〜〜い!!あたしと一緒になるんだ〜〜!!」

「俺がっすか・・・?」
「嫌なら、無理におさねえけどよ。ヤな奴だからな、あいつ。うちとは違うのは確かだろうよ。」

朽木白哉。
六番隊隊長。
そして・・・ルキアはそいつの妹として引き取られた。
俺が必死で鍛錬してきたのは、ルキアを取り戻すためだ。
その朽木白哉の下に就くだと・・・?!!!

『冗談じゃねえ!!』

真っ先に感情の部分が叫んでいた。

しかし、次の瞬間、
『だが、あいつを近くで見られる。
どんな実力を持っているのか、この目で常に確かめられる!
絶えず、自分との距離を測ることが出来る!!
超える男の背中を見ながら走ったほうが、目的を達するには早いはずだ!』

俺の理性が、叫んでいた。
『話を受けろ。こんなチャンスは二度とない。白哉を超えたいならばこの話は受けろ!』

そして・・・おれはこの話を受けていた。



「十一番隊の阿散井恋次?・・・・知らぬな。」

副官の候補に挙がった名は私の知らぬ男だった。
だがそのようなことは、問題ではない。
副官たる力があればそれ以上のことは望まぬ。

「能力はありますので問題はないかと。・・・ただ・・・。」
「なんだ、話せ。」
「犬吊出身なのでございます。朽木隊長のご身分の副官としては少々難が・・・。」
「人格に問題でもあるのか?」
「いやそのようなことはありませぬ。五番隊、十一番隊の中でも上司からの評価は高うございますゆえ。」
「ならば問題ない。その者と会ってみよう。その上で決める。よいな。」
「かしこまりました。」

そして、私は副官候補になっている男と初めて会った。
赤い髪をした、体躯だけは一人前の小僧だ。
しかし、私に敵意とも感じられるほどのきつい眼差しを向けてきた。
私に挑戦する者の目だ。
『犬吊出身なのでございます。』
直ぐに合点がいった。
確か、ルキアは同じ犬吊出身のものと学院に入っている。
そのときの片割れか。
この私から、ルキアを取り戻そうとでも思っているのであろう。

・・・・面白い。
貴様がいくら吼えようとも、この私には追いつくことはない。
後ろをいくらでも追うがよい。
貴様が私を追えば追うほど、私はさらに先を行くのみ。

私の霊圧だけで萎縮しているにもかかわらず、その目だけはぎらぎらと輝いていた。

・・・・面白い。

「お前が阿散井恋次か。」
「はい。」
「私の下に就きたいか?」
「・・そのためにここにいます。」
「よかろう。お前を副官に任命する。」
「ありがとうございます。」

そうして、恋次は私の副官となった。
絶えず、後ろから私に挑戦する眼差しを感じる。
隙さえあれば、私の喉元に噛み付きたくて仕方がないが、その隙が見つからず歯軋りする、赤い獣。

貴様が今日も見上げる白き月は、絶えず冴え冴えと天に座すのみ。

・・・孤高がゆえの月なのだ。

なんちゃって。




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