侘助は死を誘う(吉良イヅル)
・・・松本乱菊。
僕はこの人が前から気に入らなかった。
仮にも僕の先輩だ。
そんな態度は、当然僕は出したことがない。
だが・・ずっと気に入らなかった。
どの隊長にも丁寧語は辛うじて使ってはいるが、敬意の欠片も感じない。
自分が補佐すべき日番谷隊長にいたっては、自分の仕事までさせていると聞く。
そして、自分は堂々とサボっているのだそうだ。
隊長に仕事をさせておいて、自分は遊んでいる・・?
・・・・・ありえないことだ。
いや・・・あってはならないことだ。
日番谷隊長はまだお若い。
ならば、なお率先して補佐を務めるのが、副隊長たる役目ではないのか・・?
それを、遊んでいるなどと・・。
それが通っている理由は僕にも分かる。
彼女が女性だからだ。
しかも男性にとっては実に魅力的な肉体を持っている。
だからこそ、そんなことが許されているのだろう。
・・・だが・・・それも今日で終わる。
この僕が・・・終わらせてあげますよ。
彼女と戦いたかった。
少しでも早く。
だから、予定よりも早く日番谷隊長に、雛森くんのことを伝えた。
案の定、日番谷隊長は松本さんに託して全速力で戻っていく。
そう。・・・それでいい。
・・ようやく・・・あなたと戦えますね。
・・松本さん。
「・・・何?逃げるの止めたの?」
・・・逃げる?僕がですか?
「・・僕の役目は・・・あなたをここで止めることです。」
その通りだ。
そして・・・あなたを殺してはならないという指示も受けてはいない。
「『役目』?誰に与えられた役目よ?ギン?」
そう・・一番気に入らないのがこれだ。
市丸隊長と同期で子供の時からの付き合いというのは知っている。
だが・・・隊長を呼び捨てにするのだけは許さない。
幼馴染みだろうが何だろうが、あなたは副隊長で、市丸隊長は隊長だ。
もはや身分が違うでしょう?松本さん。
なのにあなたは何時まで経っても、ただの同期の気分だ。
礼節の一つも知らないんですね・・・。
そんな女に・・。
「・・・・・答える必要ないです。」
「あるわよ。」
「無いですよ。」
「あんたおかしいわよ、吉良。ギンに何吹き込まれたのか知らないけれど・・。」
うるさい・・・。
何度、隊長のことを呼び捨てにする気なんだ?
市丸隊長は僕の上司だ。
その市丸隊長に敬意を払わないなど、許さない。
気に入らない。
だがそれも終わる・・・。
「・・・しつこいな。これから死ぬ人に何も答える必要は無いって言っているんですよ。」
そう。あなたはここで死ぬのだから。
「・・・面を上げろ『侘助』」
でもあなたに死ぬ前に教えてあげましょう。
礼節というものを・・・・あなたの身をもってね・・。
行くよ、『侘助』。
この人に死ぬ前に教えてあげよう。
重みに耐えかねて、地に這いつくばり僕に侘びるかの様に頭を差し出させるんだ。
きっと見ものだろうね。
後輩の僕に、頭を下げるなんて、この人には屈辱だろう。
そしてお前の¬型になった刃で首を刈り取ってやろう。
お前ほどふさわしい斬魄刀はないだろう。
この人を・・・殺すのに。
なんちゃって。