笑いの探査神経(ウルキオラとヤミー)

「・・ヤミー、任務だ。」
「ああ?珍しいな、何だよ、任務ってよ。」

腕が癒えたばかりのヤミーに、声をかけたのはウルキオラ。
今日も見事な無表情だ。
巨漢のヤミーに比べれば、ウルキオラの体躯は子供にしか見えないが、上下関係はヤミーが下僕でウルキオラが女王様と見事に反転している。

「あの女の緊張を和らげるよう、藍染様の命が下った。
お前を相棒に加えてやる。ありがたく思え。」

あくまで高慢的なのはウルキオラの証だ。最早慣れてしまったヤミーが応対する。
「へいへい。で、何すりゃいいんだ?」
「聞いてなかったのか。
あの女の緊張を和らげる、と言ったのだ。」
「だがら、どうやって。」
「緊張を和らげると言えば、笑いしかあるまい。」

「・・・・・。


・・・・マジ・・?

・・・・・お前がやんのかよ・・。」

「俺とお前だ。他に誰がいる。」
「お笑いって言う事は・・・もしかしてコントとかか・・・?」
「そうだ。ボケとツッコミは2人いないと出来ないからな。

現世では第二次お笑いブームと言われるものが起こっているようだ。

<ここで、優等生ウルキオラの知識が炸裂>

そして、そのお笑いの中で根強い一つの形態としてボケとツッコミが上げられる。

ボケ役は話題の中で面白い事を言うことが期待される役割だ。
話題の中に明らかな間違いや勘違いなどを織り込んで笑いを誘う所作を行ったり、冗談などを主に言わねばならない。

そしてその相方は、ボケ役の間違いを素早く指摘し、笑いどころを観客に提示する役割を担う。ボケ役の頭を平手や軽い道具で叩いたり胸の辺りを手の甲で叩いて指摘する事が多い。
・・・この役割はツッコミと呼ばれるな。



・・で?どっちをやりたい。」


問われて『どっちもやりたくねえよ。ていうか、お前とお笑いはムリ。』と言いたくなるのを必死の思いで我慢するヤミー。
「・・・・。つったって、お前にボケムリだから俺がボケするしかねえじゃねえか。」

ボケはムリと言われて、ウルキオラの機嫌が悪くなる。
仮にも現在藍染様お気に入りNo.1だ。
・・実際の番号は定かではないが・・・。

出来ないことがあるなどと、ツンデレウサギのお耳にかけて許されない。←?
「誰がムリだと・・・?」
「だって、ボケなんぞムリだろうが。」
「誰が出来ないと言った。当然出来る。」
「へえ?やってみろよ。」
「いいだろう・・・。」


言うや、どうやらネタに入ったようだ。
「・・・この前、グリムジョーが独断で現世に行っただろう・・。」
「ああ。覚えてるぜ?
たしか、下っ端5体やられたんだよな。」

「独断の上、5体の兵隊を失った上、成果を上げれないようなものが俺と同じ十刃だとは・・・・。

・・ヤミー・・・。」
「何だよ。」
「俺は情けなさ過ぎて、涙が出る思いだ。」

言うや、ヤミーの方へ顔を向けるウルキオラ。
当然顔には例の涙の線がある。

・・・・下から無表情ながらも涙線のある顔で見上げれたヤミー。

『・・・つ・・・ツッコメねえ・・・・!!!』

反応の無いヤミーに向かって、ウルキオラが今度は腹に突っ込みを入れる。
ズゴッ!!・・・あまり聞きたくない音だ・・。

「・・・何か返さんか、バカ者。」
「つって何に突っ込めてんだよ。
『ああ〜〜、それでお前顔にそんな線が入ってんのか。』とかいったら、お前に逆ツッコミ喰らうだけだろうが。」

「・・無論だ。」
「・・一応言っとくが、ツッコミつーのは、思いきし裏拳いれることじゃねえ。
パフォーマンスだ。パフォーマンス。」
「・・だから加減してやっているだろう。」
「・・・・・・。」


・・さて・・・大分不安の残る所で、奇妙な二人組みのお笑いコンビが、井上織姫の前で初演を迎える事となった。

「・・どうやら、今現世ではゴミの減量が叫ばれているらしいな・・。」
「ああ?そんな話聞いたことねえけど。」
「・・だから、お前は事前の情報収集が足りんと言っているのだ。

下らん事だが、そのような事にも注意を払う事が大切だ。」
「じゃ、この空き缶は?」
「・・・それは資源ゴミだ。所定の日に所定の場所へ出さなければならん。」
「じゃ、新聞紙はどうするよ。」
「・・新聞紙は資源ごみだ。基本的に月一回の回収日が定められている・・。
その際、ダンボール紙、牛乳パック、その他の紙など、細かい分別が必要だ。」

「じゃ、このガキは?」
「・・・そいつか・・・。
・・藍染様が興味を持たれた様だが・・・

・・・殺すに足りんただのゴミだ。」
「分別はどこだ?ナマモノだから可燃ごみでいいか?

どうせ燃やすんだろ?虚閃でいいか?」

ここで、ウルキオラのツッコミが腹に決まる!!

「・・お前は何時から清掃局の者になった。専門職に任せればいい。」


「ありがとうございました〜〜!」「・・女・・どうだ、笑えたか?」

・・・・対する織姫・・・・。

「・・・・・三天結盾・・・・。


・・・・・私は拒絶する〜〜〜〜!!!!」



部屋の外まで、飛ばされる二人・・・。


「・・拒絶されたか・・。
・・・やはり、ツッコミが甘かったようだ・・。
穴を開ける程度でなければな・・・・。」
「・・そういう問題じゃねえと思うけどよ・・・。
つうか、俺たちあの女だけじゃなく笑いにも拒絶されたぜ。確実に。」



優等生のウルキオラ・・・。


どうやら、笑いの探査神経(ペスキス)までは鍛えられなかったらしい・・・。


この日をもって、このお笑いコンビは解散したと言う・・・。





なんちゃって。

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