闇を統べる者達(藍染とギン)

・・ウェコムンド。
荒廃したホロウの世界。
そこにはただ、死と・・虚無と・・・絶望が渦巻く場所である。

そしてこれからここが、藍染惣右介の拠点となる。

居城は既にホロウに指示して作らせている。
冷たい石に覆われた城だ。
その最上階には一つの玉座が置かれている。

藍染はその玉座を下から眺めた。
はるか高い場所に据えられた玉座。
その時後ろから、声がかかる。

「ひゃあ、またこれはエライ高い玉座ですなあ。
隊長が指示されましたのん?」
ギンだ。その問いに藍染は薄く笑って答える。
「いいや。彼らが気を利かせたつもりだろう。私は特に指示は出していない。」
「へえ〜。しかし、五番隊隊長さんからエライ出世しましたなあ。
なんや、見違えるようになってもうたし。」

太い黒縁メガネを外し、髪をかき上げた藍染には最早昔の面影はない。
いつも穏やかな光をたたえていた茶色の瞳は、今や冷酷な支配者としての光を放っている。

「もう、『人格者』でいる必要はないからな。元々眼鏡は伊達だし、小道具の一つに過ぎない。
不要だから外させてもらった。

東仙もどうやら今までの自分と決別すべく、気持ちを切り替える意味で服装を変えるようだ。

・・・君は何も変えないのかい?」

「隊長みたいに、ボクも髪を上に上げましょか?」
明らかに本意ではないのが分かる。藍染も軽く受け止めている、と思っていたときだった。
「そうだな・・・。やってみようか。」
「え?」
そしてギンの方に手を伸ばし、前髪を後ろへかき上げた。

途端に藍染の手から銀糸が零れ落ちる。
まさか藍染が本気でやるとは思っていなかったのだろう。憮然としたギンがいた。
口元に笑みをたたえながら、藍染が言う。
「・・ああ。残念ながら無理のようだ。君の髪は細い上にくせが無いからね。
後ろに流すのは無理だな。」

「分かってはるくせにやらんといて下さい。」
「君は何処にいても君だ。
瀞霊廷にいようと・・ウェコムンドにいようともね。

・・・何も変わらないよ。」
「おかしいですか?」

「いや・・。

だからこそ、私の副官にふさわしいのだよ。・・・ギン。」

藍染がギンの髪から手を放したのを見ると、今度はギンが藍染の髪に手を伸ばす。

「前髪がまだ残ってますよ?隊長。」
藍染の残っている前髪をギンが後ろへ流す。
二人の身長差はほとんどない。僅かに藍染が高い程度だ。
藍染もギンの行動を興味深そうに許している。

「・・ああ。でもやっぱり残した方がエエなあ。」
「そうかい?」
「やっぱり少し下ろしといたほうが・・・。」
「下ろしておいた方が?」

藍染が先を促す。

「・・・なんや、こっちのほうがエッチくさいんやもん。」
これには藍染もクスリと笑う。
「ギンはエッチ臭いほうが好きなのかい?」

今度はギンがニヤリと笑う番だ。
「さあ?どうですやろなあ。


でも・・強いだけや面白ないやろ?
『天に立つ』お人なら・・・

強さに見合う『魅力』がないと。」

「・・なるほど。
覚えておくとしよう。」

そして藍染はギンから離れ、玉座への階段を上り始めた。
ギンはそれを眺めている。

目的までの道は険しく闇に覆われている。
しかしこの者達には迷いは無い。


口元には絶えず不敵な笑みが浮かぶ。



なぜなら・・


彼等は行く手を阻む闇そのものを支配しようとする者だからである。





なんちゃって。

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