四番隊執務室への訪問者

ここは四番隊執務室。卯ノ花と勇音が仕事をしているときである。
烈    「・・・どなたかいらっしゃっているようですね。」
勇音   「だれでしょうか。」
烈    「先ほどから外でお待ちのようです。扉を開けてあげてくれますか?」
勇音   「わかりました。」

勇音が扉を開けてみると・・・・そこに立っていたのはやちるだった。
勇音   「やちるさん!どうしてこんなところで。入ってくればいいのに。」
勇音が不思議に思ったのも無理は無い。
いつもやちるは問答無用で入室の許可も無いまま入ってくる。
烈や勇の都合などおかまいなしで、入ってくるなり自分の言いたいことをしゃべり始めるのが常なのだから。
烈    「まあ、やちるさん。お入りなさい。・・・何かお話があるようですね。こちらにお座りなさい。今あなたの好きな金平糖を出しますからね。」

いつも四番隊に仕事を押し付けて去っていく同一人物とは思えないしおらしさに、いつも優しい四番隊隊長と副隊長は輪をかけて優しくなった。
やちる  「あのね、お願いがあって。」
烈    「なんですか?」
やちるに 「あたしに治療系の鬼道を教えて欲しいの。」
勇音   「え?」
勇音が驚くのも無理はない。得て不得手があるとはいえ、死神がそれくらい出来るのは常識だから。ましてや、やちるは十一番隊副隊長。死神の頂点ともいえる存在が治療の鬼道を教えてくれなど冗談にしか聞こえないだろう。

烈    「やちるさんは霊術院を出ずに副隊長になられたのでしたわね。」
やちる  「うん。だからあたし探知とか治療とか出来なくて。」
霊術院を出ていないやちるは死神の常識とされる能力の使い方を何一つ教わったことが無い。
その霊力は敵を倒すためにしか使われたことは無かった。
でも、何故今になってやちるは治療系の鬼道を習いたいと思ったのか・・・

烈    「更木隊長のことがあったからですね?」
やちる  「・・・うん・・」
やちるがいつも張り付いている剣八は、先日旅禍と戦い瀕死の重傷を負った。
結局は烈がやちるに呼ばれて治療し、事なきを得たのだが。
もう少し手当てが遅ければ、さすがの剣八もあぶないところだった。

やちる  「あたし・・怖かった。剣ちゃんが死んでしまうんじゃないかって・・
でも何にも出来なくて・・・あんなのもう絶対いや・・あたし・・剣ちゃんのために何にも出来ない。・・・だから・・」
勇音   「大丈夫よ。訓練すればすぐに出来るようになるわ。やちるさんは何といっても十一番隊副隊長なんだもの。」
烈    「そうですね。霊力をコントロールできるようになればやちるさんも治癒出来るようになるでしょう。私も出来る限りお手伝いしますよ。」
やちる  「ありがとう、卯ノ花さん、勇音さん。いつも我侭言ってごめん・・」
やちるは安心したのか、ようやく机の上の金平糖に手を伸ばした。いや、正確には金平糖の入った菓子器に手を伸ばした。
そしてそのまま菓子器に口をつけて流し込み始めたのである。
これが彼女の正しい金平糖の食べ方である。
よい子のみんなはまねをしてはいけません。


そして、やちるの修行が始まったのだが・・・・・
勇音   「ああ!やちるさん!!強い強い!もっと抑えないと、あ〜〜〜!!」
ガシャーンと何かが壊れる音が四番隊からよく聞こえるようになる。
壊れているのは霊圧測定器。霊圧の大きさよりも繊細な霊圧の調節が必要とされる治療系の鬼道には初歩の学習方法なのだが・・・
やちるは調節どころかメーターを振り切ってぶっ壊しまくっていた。
やちる  「またやっちゃった・・・」
烈    「ほほほ、今の20分の1くらいになると機械も壊れないようになるでしょう。」
(・・・そういう問題ではない。・・しかし初めてのときは機械がナノ粒子にまで分解するほど霊圧をぶっ放していたのだから、進歩といえば進歩だが。)
やちる  「よーし!こんどこそー!!」
勇音   「あ〜〜〜〜〜〜!!」
ガシャーン!!頑張れやちる。先は長いぞ。

そして、一ヵ月後・・・
やちる  「ねぇ、マキマキ。どこか怪我してない?」
マキマキ 「いえ、特には、ブホッ」
やちる  「あ、たいへーん!!鼻血出てるよ、マキマキ!!あたし治してあげる!あたし今、治療系鬼道習ってるんだー。」
マキマキ 「え、これは先ほど副隊長が・・ぐえ〜〜!!!」
弓親   「大変だ!!ただでさえ醜い荒巻の鼻がピノキオみたいに伸びているぞ!!」
やちる  「あれ〜おかしいなぁ。」
弓親   「早く四番隊を呼べ!!上級医療班だぞ!!これ以上僕の前に醜いものをさらさせるな!!!」(・・・そういう問題なのか?弓親・・)
マキマキ 「たすけて〜〜〜!!」




・・・そして・・・
一角   「やれやれ困ったもんスね。でも治療系鬼道を習うなんて、うちの副隊長にもかわいいところあるんスね。隊長。」
剣八   「なんだ一角、知らなかったのか?
あいつくらいかわいいやつなんて、何処にもいやしねぇんだよ。」にやりと笑って答える十一番隊長だった。


・・・・ごちそうさま。               なんちゃって。

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