夕陽の下の冬獅郎(黒崎夏梨)

冬獅郎は最初っからヘンな奴だった。

道路に飛び出そうになったサッカーボールを拾ってもらったのが、最初にあいつに会った時だった。
飛び出そうになったボールを、やたら上手く扱ってやがると、顔を見て驚いた。

・・げ・・・銀色の髪してやがる・・!
おまけに、目は碧かよ!!

外人かよ!!!
外人の小学生だ!!←やっぱ小学生認識

日本語・・しぇべれねえよな・・。
ええと、やっぱ英語か?
「ありがとう」は「サンキュー」でいいんだよな・・。
でも、ボール返してくれとか、あたし言えねえ・・!
あ、でも「ボール、プリーズ。」で通じるかも!!?

・・とかなんとか、思ってると銀髪の外人の小学生が話しかけてきた。
「・・お前のか?」
お前のか?お前のかを日本語で言うと・・・日本語じゃんかよ!!
なんだよ、日本語喋れんのかよ!先にそれ言えよ!

「う、うん。」
というと、ボールをポイと渡してきた。
「ありがと。」
と礼を言おうとしたら、もうあいつは何処にも居なかった。

あれ?あいつ何所いきやがったんだ?
消えたみてえに居なくなりやがった。

・・・・ヘンなガイジン。


その時はまさか、直ぐ会う事になるとは思わなかった。
タチの悪い中学生とフットサルをすることになって、助っ人を友達と一緒に困ってた所に、あいつに会った。

このあたりで一番きれいな夕陽が見れる所だった。
けど、見てんのは携帯電話かよ。眉にしわ寄せやがって。
せっかく今日はきれいな夕焼けなのによ。
・・・何の為にここに居やがんだ?こいつ。

たった一人ぼっちで携帯をいじってるあいつ。
・・遊ぶ相手居ねえのかな・・。
あんだけ、ボールの扱い上手いのによ・・。
絶対サッカー上手いぜ?こいつ。
もったいねえ。

・・・ん?
サッカーが上手い?

そうだ!こいつだ!!こいつを助っ人にすりゃいいんだ!!
同じ小学生だし!この際ガイジンなのはどうでもいいだろ!日本語出来っし!
こいつも、一人でヒマそうだし!携帯いじってるより、サッカーの方がぜってえ楽しいし!

「なあ!フットサルやらねえか?!!」
わくわくしながら誘ってみたら、あっさり断ってきやがった。
なんだよ、その態度!
サッカーがなんかガキの遊びだみてえな顔しやがって!大体オマエもあたしと同じ小学生だろ?!

すたすたと帰ろうとするのにムカついたあたしは、あいつの後ろの頭めがけて、思いっきりシュートしてやった。
あたしのシュートはキクよ!ざまあみな!

・・と思ったら・・・・。
オーバーヘッドキックで返しやがった・・・・。
しかも、ノールックかよ・・。

そんな凄いのを見たら、あたしの友達も勝てると思ったらしい。
必死であいつを誘う仲間になった。
おいおい、ちょっと前まではワルそうとか言ってたのによ・・。

名前は日番谷冬獅郎っていうらしい。
なんだよ、見た目ガイジンの割りに、バリバリ日本の名前じゃんか。もしかして、ハーフなのか?

けど、冬獅郎はサッカーをやるとは結局言わなかった。
でも、あたしは信じてたけど。

だから、練習に来なかった時はムカついた。
で、居そうなところで思いついたのが、例の夕陽の見える丘だった。
冬獅郎は居た。なんだよ、また携帯いじってんのか?

そういや、あたしは何で冬獅郎が此処に居ると思ったんだろ。
そうか。こんなにきれいな夕日が見れるのに、携帯ばっかいじってるからだ。
だって携帯いじるだけなら、こんな所に居る必要なんてないだろ?

たぶん、そこがヘンだと思ったからだと思う。
此処に来る理由を聞いたら、「空が見えるから。」って答えてきた。
空ならどこでも見れるだろ・・。

「・・・懐かしいんだ。」
そう続けて云う冬獅郎は、なんか妙に大人みたいに見えた。
・・おんなじ小学生のくせに。・・あたしよりチビのくせに。

その時もフットサルの試合には来るとは言わなかった。
結局、試合の時間になっても来なかった。
・・まあ、来るとは確かに言わなかったし。そんな事を今言ってる場合じゃねえし。
あいつら中学生に勝たなくちゃなんねえからな。

足をやられた、あたしはちゃんと走れなくって、マズいカンジだった。
けど、ホントにマズいっていうその時・・冬獅郎が来た。

後は・・・もう、冬獅郎はスゴかった。
相手の中学生なんか、何も出来なかった。何かしようとしても、どうしようもない感じだった。
・・・レベルが違うんだ。スピードも。力も。
最後、あたしにゴール決めさせるところとかも。


結局試合には大逆転で勝った。その後、でっかい化け物が出てきて・・・冬獅郎は一兄とおんなじ死神の姿になっていた。

冬獅郎って・・死神だったのか・・。
小学生なのに・・スゲエ・・!←(笑)

死神になった冬獅郎は、サッカーと同じくらい・・いいや、それ以上にスゴかった。
強い・・!スゲエ!!氷ってた!!

一兄と同じ死神なら、一兄の事も知ってると思って、居場所を聞いてみたんだけど、冬獅郎は知らなかった。
冬獅郎はウソをつく奴じゃない。

・・やっぱ・・知らないんだ・・・。
何所行ったんだよ・一兄・・・。

「あいつは強くなろうとしている。」って冬獅郎は言った。
あたしみたいに、最後まであきらめずに、強くなろうとしているって、言ってた。
なんかの・・修行の旅に出てんのかな・・一兄。

あたしに、「心配すんな、お前の兄貴だろ?」って、言った冬獅郎は・・なんか一兄と似てる所がある気がする。
同じ死神だから、似てる所があるのかな。

けど、ホントに冬獅郎は凄かった。
大人の女の人を部下にしてるし、なんかの隊長してるらしいし。結構エライらしい。

スゲーよな!!
あたしよりチビなのに!!←あっ!
小学生なのに死神だし!←ああ!
小学生なのに隊長なんだもんな!!←あああ〜〜!(笑)

冬獅郎は小学生じゃないって、怒ったけどよ・・・。

どう見ても小学生だよな?あたし間違ってないよな?!



・・冬獅郎にはそれからしばらく会ってない。
でもあの夕陽の見える丘で、また会える気がなんかするんだ。

スゲエきれいな夕日なのに、相変わらず携帯ばっかいじりながら。


・・・・でも・・・そんな冬獅郎はあたしは嫌いじゃないけどね。




なんちゃって。

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