護廷十三隊恒例行事 ジンギスカン

藍染惣右介の反乱の起こる前・・・。

護廷十三隊において、ある催しが行われていた。

護廷十三隊の隊長格が集結し、ジンギスカンをつつくというものである。

護廷十三隊によるジンギスカン・・・別名「仁義好堪」。(なんか暴走族が使う言葉みたいだね・・・)
・・・そこでは当然仁義無き戦いが繰り広げられる。


仁義無き戦い・・・。


当然この時点で仁義が大好きな者は脱落する。

「そろそろ豆腐を入れてもよいか、浮竹。」
離れたところで、土鍋に豆腐をいれるか尋ねたのは、七番隊隊長、狛村左陣。

仁義が大好きなこの男、実は菜食主義に近い食生活を送っている。
魚介の類も好きではあるが、野菜の方が好きだ。
肉は食べれなくは無いが、出されない限りはまず食べない。
食生活においても、自分を律する堅い男だった。

「そうだな。もういいかもしれないな。」
応えたのは十三番隊長、浮竹十四郎。
食べることは大好きだが、仁義無き戦いまでして食べようとは思わない、仁義の好きな男だ。

仁義好堪に脱落した者たちは、離れたところで湯豆腐を喰う。
下手に魚介を入れようものなら、こちらが戦場と化す為、湯豆腐どまりだ。

「あ、葱煮えたかなあ。ボク好きなんだよね〜〜。」
騒がしいのが嫌いな八番隊隊長、京楽春水は最初から戦線離脱。
呑みに専念すると決めている。

さて、仁義好堪の方はどうなっているかというと・・・。

「あ。僕焼きますね。」
既に食欲が無くなっている三番隊副隊長、吉良イヅル。
・・・・肉を入れる係と化していた・・。(ヘタレているとも言う)

「ほほほ。みなさんちゃんとお野菜も召し上がってくださいね。」
四番隊隊長、卯ノ花烈は野菜投入係。
肉ばかり食べようとする者たちに栄養指導をする。

副隊長の虎徹勇音は食材の運搬を黙々とこなしている。
「後で、どこかに食べに行こう・・・。でも一人じゃ行けないし・・・。
誰か来てくれるかなあ。」
デカイ体のわりに、蚤の心臓の勇音だった。

「今日のジンギスカン鍋は、新製品でネ。熱の伝導率が従来の3割り増しなんだヨ。それでネ?云々かんぬん」
新開発した鍋の説明を延々としているのは十二番隊長、涅マユリ。

食にまったく興味の無い彼は、食事は錠剤と訳の分からない液体のみだ。
食事に時間をかけるくらいならば、研究をしている方が楽しいらしい。

副隊長のネムが、無表情ながらも羊のコスプレをしているのは、一応ジンギスカンの雰囲気を盛り上げようとしているからだろうか・・・。
・・・似合うだけに怖い。

さて・・食べる方はと言うと・・・。

「隊長と殺り合えるたあ、ちったあ面白くなりそうだぜ・・。
遠慮は要らねえ。かかってきな。」
「剣ちゃん、やる気まんま〜〜ん!!」
何か大きく勘違いしている十一番隊隊長、更木剣八。そして副隊長の草鹿やちる。
ジンギスカンは戦いですが、殺し合いではありません。(あしからず)。

「お、肉貰い!!」
手を伸ばした二番隊副隊長、大前田の手が突然凍る。

「・・・それは俺の肉だ。大前田。てめえの肉じゃねえ。」
食べ盛りの十番隊隊長、日番谷冬獅郎。
自分の分け前は絶対死守だ。
喰って背を伸ばさねばならぬ。頑張れ、少年!!(体だけはね)

瞬歩をしながら鍋の上の他人の肉を掻っ攫っていくのは、二番隊隊長、砕蜂。
小柄な体を十分に生かしているようである。
その冷徹さには、正しくこの仁義好堪にふさわしい。

副隊長の女性陣は団結して勝負する。
十番隊副隊長、松本乱菊を筆頭に、五番隊副隊長の雛森桃、八番隊副隊長の伊勢七緒は女性の陣地を鍋に設定。
肉を入れるイヅルに檄を飛ばす。
「吉良!!こっちに肉!!」

「馬鹿野郎!!こっちだこっち!!」
負けずに声を張り上げるは、六番隊副隊長、阿散井恋次及び七番隊副隊長、射場鉄左衛門、そして九番隊副隊長の檜佐木修兵。
男性の副隊長といえども、この戦いを制するためには団結するより他は無い。

さあ、どうするイヅル!!
女性の副隊長の陣地に肉を投入するのか?!
それとも仲のいい男性副隊長の陣地に投入するのか?!!
それとも長いものには巻かれてしまって?隊長たちに媚を売るのか?!!

ああ〜〜〜みんなの視線が熱い〜〜!!
肉をよこせと叫んでいるぞ?!!
決めろ!!決めるんだイヅル!!
何をしている?!!手が止まっているぞ?!!
「ダメだ・・・決められない・・・。
僕は・・・最低だ〜〜〜!!!」←お約束?

・・・・吉良イヅル退場。(ああ〜気の毒に〜〜)
変わりに羊のコスプレネムが肉投入係に就任。
慈悲の欠片も無い、平等な投入で更に戦いは熾烈なものに。

その頃・・。
平和主義の九番隊隊長、東仙要は意外にもこのジンギスカンに参加していた。
・・・因縁のあの男と決着をつけるためだ。

「私の肉は渡さない・・・。
・・・卍解。『清虫終式 閻魔蟋蟀』」←ってわざわざ卍解?!!
ジンギスカンの鍋周辺が巨大な東仙のテリトリーに!!
この範囲内の者は触覚以外の全ての感覚が奪われる!!
ジンギスカンは東仙の独壇場だ〜〜〜!!

「・・・この中では、私以外の者は全ての者は感覚をなくしてしまう。
更木・・・いくらお前が好戦的とは言え、この中では・・・・な、何?!!」
なんと剣ちゃん!!
今までの記憶と残された触角を頼りに箸を動かし、東仙の肉を掴もうとしているぞ?!!
お、恐るべし!!更木剣八!!

「・・この状況においても私の陣地を侵すとは・・・・。
・・・更木剣八・・・。
・・・私は・・・そのお前の無神経さが・・・許しがたいといっているのだ!!!」
ああ〜〜〜!!箸でバトル勃発〜〜〜!!!

激しい戦いの中、剣八の箸が、東仙の自慢のゴーグルを取り上げた〜〜〜!!
「な・・何?」
自慢のゴーグルを取られ、卍解が解ける!!

「何だ、ゴーグルか。
ちっ。こんなもん食えやしねえ。」
ぽいと後ろに放り投げる剣ちゃん!!ああ〜〜ひどい〜〜!!
東仙の自慢なのに〜〜!!

「・・・わ、私のゴーグルが・・・」
・・・東仙要、退場。←ホンマ気の毒やなあ。


一方。三番隊隊長、市丸ギンと五番隊隊長、藍染惣右介は意外にも湯豆腐組にいた。
「僕はあまりジンギスカンは好きではなくてね。市丸がこちらに来るとは思わなかったな。
君はああいうのが好きだと思ったが。」
この頃の惣さまは焼酎が気に入っているようだ。

「僕もあんまりああいう濃い〜味付けあんまり好きやないんですわ。
まあ、肉食べとうなったら、ここから『射殺せ神鎗』。(伸びるギンの斬魄刀!!)
・・まあ、こうやったら食べれるし。
藍染隊長、食べます?」

「それはありがたいが・・・・肉以外の物まで食べる気かい?市丸。」
「ああ、こらアカンなあ。大前田まで刺さってもうた。
こんな不味そうなもん食べられませんなあ。
まあ、たまに違うもんまでついてくるんが、あきませんなあ。」
「・・・君も気の毒だったね。大前田君。
早く卯ノ花隊長に手当てしてもらうといい。」

恐るべし、ジンギスカン!!敵は背後からも襲ってくるぞ!!

「肉は?肉はもうねえのか?!!」
「ちょっと〜〜〜、全然足りないわよ〜〜?」
「いや、あっちにある。は!!でもアレは!!」

肉に飢えた者たちが見つけたのは・・・。
自分の肉に一味を振りかけている、六番隊隊長朽木白哉の姿だった。
パン粉の如く肉を包む赤い一味。

『・・・アレを喰うのか?』
皆が疑問に思う。
「・・・下味はこれくらいでよい・・・。・・・・後は食す時に調整すればよいだろう。」

って、それが下味?!!喰う時にまだかけるの?!!
驚くのはまだ早い。
これはジンギスカンだ。
この下味をつけられた赤い肉が、ジンギスカンの鍋に投入されるわけである。
「イヤ〜〜〜!!!!そんなの鍋に入れないで〜〜〜!!」
「馬鹿野郎!!そんなの入れたら他のもんまで喰えなくなるだろうが!!朽木!!」

しかし、無情にも赤い肉はジンギスカン鍋の中へ・・・!!
一瞬にして鍋一面が唐辛子で真っ赤だ〜〜〜〜!!


・・・途端に止まる皆の箸。


仁義の無い戦い、仁義好堪・・・・。



真のファイナリストは・・・・朽木白哉だった・・・・。
「・・・これくらいで降参とは・・・温いな・・・・。」
煮えた赤い肉に、さらに唐辛子の花吹雪を彩らせて、食す。美しき兄様・・・。

・・・最早誰も止められない。


さて、ジンギスカンにも敗れ、湯豆腐も好きではない者はというと・・・。

「“万象一切灰燼と為せ”流塵若火 」
一番隊隊長、山本元柳斎重國の出す炎で、炉辺焼きを楽しむ事となっている。
食材は自前だ。
山じいの炎を使わせていただく、御礼は好物の味噌田楽と決まっている。
直火の遠火。
味噌の焦げ具合には山じいは煩いので、注意が必要だ。

だが、これだと誰もが間違いなく食えるので、結構山じいは人気がある。


「ふむ。今回も盛況のようじゃのう。」
副官の名無しのダンディーに焼かせた、豆腐の田楽を自慢のヒゲにつかぬよう、気をつけながらも美味そうに食べている山じいがいた。



なんちゃって。

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