除夜の炎(護廷十三隊)

護廷一三隊の大晦日。
しんと寒さがつのる中、夜は静かにふけていく。

そして今年・・・五年に一度、一番隊の中広場にて盛大な炎が夜通し焚かれる。

燃されるのは、七竈の木と・・・護廷一三隊、各隊長の羽織だ。

隊長の羽織に染み付いた、過去5年間の業・そして魔を燃す事により浄化する。
そして新たな真白の羽織に袖を通し、各隊長は新年を迎える。

長きに渡る歴史の中で、粛々と行われてきた静かなる行事。


隊長の羽織を火にくべる役目は副隊長の役割だ。


そして・・・今年は前代未聞の三隊長を欠いた状態で、炎が上がる。
欠いたは・・三番隊、五番隊、九番隊。
ソウルソサエティを混乱に落としいれ、多大なる犠牲を強いた・・逆賊。


最初に火にくべたのは七番隊。
副隊長の射場はサングラスの向こうから燃える狛村の羽織を見る。
「今年は、けち臭い年じゃったのう。
・・来年は・・ええ年にせないかんけぇ。」
そして、燃えるを見届けるとさっさと背中を向け、戻っていった。


次に来たのは六番隊。
恋次は無言で羽織を炎に投げ入れる。
彼と隊長である白哉との差はまだ大きい。
だが、もっと縮めてみせる。
そう決意する恋次であった。

四番隊と八番隊、十番隊、十二番隊、十三番隊の副隊長及び吹く隊長代理は揃って一番隊にやってきた。
勇音、七緒、乱菊、ネム、清音・・。
普段は口数の多い副隊長も、そうでない副隊長も無言で羽織を投げ入れる。
彼女らの頭をよぎるのはこの1年の、衝撃的な事件だ。
今までの常識が覆され、自分の足元さえも危うくなるような感覚。

副隊長を務める彼女らさえもが味わった、苦い感覚だった。


二番隊がやってきたのはそれからだ。
大前田は実にあっさりしている。
さっさと火に羽織を投げ入れ、さっさと帰っていった。
まったく感慨深いところは感じられない。


除夜の鐘が鳴り始める。

三番隊の副隊長・・イヅルが一人やってきた。
だが、彼が投げ入れる羽織は無い。
だが、火をじっと眺めている。


「なんだ。お前も来てたのか。」
後ろから声をかけてきたのは、九番隊の修兵だ。
「先輩も?」

イヅルと違って、修兵が手に持っているのは隊長の羽織だ。
当然、背中の部分には九の文字がついている。
それに気づいたイヅルが、声を出した。
「先輩・・これ・・東仙隊長の?」
「・・ああ。置いていかれたんだ。
もしかして・・これも隊長の決意の表れだったのかもな。」
「そうでしょうか・・。」

「戦いをあれほど嫌っていた隊長が、裏切ったんだ。
・・・相当の決意があったからだと思う。
・・・ま、理由はわからねえけどな。」
「そう・・ですね。」
「かといって・・謀反を起こした隊長の羽織を火にくべてよいものやら。
分からねえで来ちまったがな。」


「遠慮はいらない。総隊長の許可は得ている。」
後ろから声を変えたのは総隊長の羽織を持った、一番隊の副隊長だ。
一番隊の羽織は最後に火にくべられる。
「君が来ることは総隊長は予想されていたよ。檜佐木副隊長、羽織を燃すがよい。」
「ありがとうございます。」
九番隊の羽織が火に投げ入れられる。

「これで最後なんですか?」
尋ねるイヅル。
「そうだな。十一番隊は相も変わらず、来ない。
正式に連絡があった。五番隊は・・来るまい。」

十一番隊の隊長、更木は隊長に就任してから一度も羽織を替えていない。
「羽織を燃やしたところで、何にもかわらねえよ。
この羽織は、隊長としての俺の歴史だ。
過去は消せねえ。だったら抱えて進むよりしかねえだろうが。」

隊長就任の時点から異例だった更木。
穴だらけで、変色すらしているが、更木の羽織は彼の隊長就任と共に、年を越す。

一番隊の羽織が投げ入れられる。
煙と共に、今まで困難が空に上っていく。

「剣ちゃん、もうすぐ新年だね。」
「そうだな。」

各隊長は静かに年が替わるを待つ。
今までの己を、頭の中で反芻しながら。

それぞれ微妙に差はあるも、思うは同じだ。


護るべきものを護る。


その決意と覚悟。


除夜の鐘は鳴り続ける。
炎は天に立ち上る。



新年まで・・あと僅かだ・。




なんちゃって。

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